「可能性」が失われた夜に。 - 2005年01月12日(水) 現実を思い知らされて、酔えない酒を胃に入れて帰ってきた夜。 「何落ち込んでるの?だいたい、そういう出世欲なんて、もともと全然ないくせに。偉くなったらなったで人を押しのけなければならないことも多いしさ、かえってめんどくさいだけだよ」 彼女は、僕のことをよく知っている。あるいは、僕以上に。 確かにそうなのだ。僕は今まで自分が偉くなるための努力というのに積極的ではなかったし、そうやって他人と陣地争いをするくらいなら、別に食うのに困るわけでもなし、自分の畑をひっそりと耕せばそれでいいと思っていた。良い言葉でいえば「無欲」悪い言葉で言えば「甲斐性なし」。 いや、本当に自分でも意外だったのだ。この世界の上のほうに僕の居るべき場所がない、というのを知って、こんなに落ち込んでしまうなんて。 「偉くなれなくてもいい」と自分では思っているつもりでも、「もうお前は、偉くなれない。少なくとも頂上にはお前の居場所はない」という現実をつきつけられるというのは、なんだかとても辛いものだ。 「できなくていい」はずのことでも、「できる可能性がない」ことを思い知らされるというのは悲しい。そしてたぶん、僕は自分でたいした努力もしないで、結果がどこかから勝手に転がってくるのではないか、と「そんなの興味ない」というポーズで予防線を張りながら、浅はかな期待をしていたのだ。「やればできるはず」という無意味なエクスキューズ。 「それはそれでいいんじゃない。あなたは偉くなりたいのかもしれないけど、人に命令するのには向いていないから。」 彼女の言うことは、ものすごく正しい。 でも、自分でもわかっていたはずのその事実をあらためて受け入れるのは、やっぱり辛い。 ...
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