マニアックな憂鬱〜雌伏篇...ふじぽん

 

 

「理由」という病 - 2004年08月02日(月)

「あっ、先生、○○先生ですよね」
「えっ、どうしてこんな所にいるの?」
「いろいろ事情があって…。絶対みんなには内緒にしておいてくださいね」

 こんなことが、最近2回も続いた。
 彼女たちが働いているところが風俗とかだったら、それはそれで「お互いに気まずい再会」だったかもしれないが、実際は、ひとりはラーメン屋で、ひとりはパチンコ屋だった。
 彼女たちは「本業(いわゆる医療関係の専門職)」を持っているし、実際にその資格を生かして働いている。
 でも、こうして「副業」として、ラーメンを作ったり、パチンコ屋で飲み物を売っていたりするわけだ。
 「どうして、こんなところにいるの?」と思わず尋ねた。
 パチンコ業界の方には失礼だけど、白衣姿しか知らない人が真っ昼間にパチンコ屋でコスプレみたいな格好をしていれば、そう思うのは異常なことじゃないだろう。
 彼女は結局、その「理由」を教えてくれなかったけれど、僕は台の前で流れていく液晶を見ながら、「どうして彼女は、こんなところで働いているんだろう?」なんてずっと考えていた。本当はすぐにでも店を出てしまいたかったけど(基本的に知り合いがいる店というのは居心地が悪くてイヤなのだ)、急に帰ったりするのもかえって気を遣わせてしまうのではないかと思ったので、とりあえず1万円だけ打ってみることにしたのだ。
もし当たって、彼女にそのドル箱を抱えさせたりするのは気まずいなあ、なんて思いながら。

結局、全然かすりもせずにキリのいいところで店を出てきたんだけど、そのあいだ、僕は「理由」のことをずっと考え続けていた。
「悪い男にでも騙されて、借金でもあるのか」「(まだ若くてそんな感じには見えないけど)子供がいて、育てるためにお金が必要なのか」とかね。
 
 まあとにかく、「どうしてもお金が必要な理由」があるのではないか、なんて。
 
 でも、こういうのって、あらためて考えると、単に「遊ぶお金が欲しい」とか「海外旅行に行きたいから」とか「パチンコが好きだから(たぶん違うと思うけど)」でもおかしくもなんともないのだ。そういう「事情」みたいなものに過剰に「ドラマチックな理由」をつけたがるというのは、ものすごく悪い癖だ。
 単に彼女たちにとっては「キツイけど割のいいバイト」であったのかもしれないし。
 (余談だが、あのパチンコ屋のバイトって、「給料はいいけど、ものすごくキツイ」らしいです。前にやっていた同級生が言ってました。)

 ほんとうに、僕などは世の中のすべてのことに「理由」があるような気がして(いや、たぶんそれなりの「理由」はあるんだろうけどさ)、物事を深読みしすぎたり、「どうして僕のことを好きになったの?(あるいは、「どうして嫌いになったの?)」なんて質問をして困らせてしまったりするのだが、人間の行動を決めているのは「なんとなく」とか「理由なんて言えないほどの些細な感情の動き」だったりするわけだ。

 そんなことはわかっているはずなのに、そこに「理由」をつけて自分を納得させようとしてしまう。割り切れないものをむりやり割り切ろうとしてしまう、「理由をつけたい」という病。
 ただ、その場にあることを「現実」として受け入れれば、いちいち自分に関係ないことで悩むこともないのに。

 正直、その女の子が昔好きだった人に似ていなかったら、「まあ、がんばれよ」で済んだのかもしれないけれど。



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