「試練は、それに耐えられる人間に与えられる」 - 2004年07月13日(火) 「もしそういう存在がいるとするならば、きっと神様は『それに耐えられる人間』を選んで試練を与えているんだよ」 そう彼女は言った。 でも、僕にはそれが信じられなかった。 なぜなら、僕はその「神が与えたもうた試練」という大波に耐えきれずに流されてしまった人を知りすぎてしまったから。 「耐えられる人にのみ、試練は与えられる」 それはたぶん、大波に耐えて踏ん張っている人間の姿しか、僕たちには見えないから、そう思いこんでいるだけなのだ。 波間には、「耐えられない試練を与えられた人々」の亡骸が、誰にも見つけられることもなく、ずっとずっと漂っている。 そして彼らは、「試練」について語ることはできない。 「耐えられた人にしか、試練について語る機会は与えられない」 それが現実でも、僕たちは今日も、「耐えられる人間に試練が与えられているはず」と自分を励まして大きな波に向かっていく。 「耐えられる」なんて保証はどこにもないし、今度はどんな大波が来るかなんて誰にもわからない。 それでも結局、押し流されて海の藻屑となるまで、立ち向かい続けるしかないのだ。 ...
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