「はじまりの瞬間」 - 2004年05月07日(金) 夜空を見上げていたら、彼女が言った。 「ねえ、今日は満月なんだって。月ってさ、やっぱりウサギが餅つきしているように見えるよねえ。昔の人は、よくそんなこと考えついたもんだよねえ」 僕も「確かにそうだな」と思いながら月を観ていた。 それは、「古くから言い伝えられていること」なのだけれど。 人類の歴史のうちのある一点で、どこかの誰かが最初に 「月って、ウサギが餅つきしているみたいに見えるね」と言ったのだ。 もちろん、現代の日本語とは違う言葉で、だろう。 その発想にたくさんの人々が「なるほど」と感じて、「月のウサギ」の伝承ができた。 「あたりまえのように、ここにあるもの」だと僕たちが感じているものだって、すべてには「はじまり」があった。 そしてきっと「終わり」もあるのだろう。 今こうしている瞬間にも、いろんなものがはじまっていて、そして終わっているはずだ。 僕は、そんな「はじまりの瞬間」に少しでも関わっていたい、そんなふうに思っている。それはたぶん、人間にとっての永遠の命にいちばん近いもののような気がするから。 「月でウサギが餅つきしている」というのを最初に言い出した人間は、まさか自分の思いつきが、こうして未来に言い伝えられていくなんて、夢にも思っていなかったんだろうけどね。 ...
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