マニアックな憂鬱〜雌伏篇...ふじぽん

 

 

「ロード・オブ・ザ・リング」テレビ版の感想 - 2004年02月08日(日)

「ロード・オブ・ザ・リング」テレビ放映を観ての感想です。


(1)やっぱり映画館で観たほうがいい!

 こういうファンタジー映画は、感情移入度が面白さに直結すると思うのだけど、家のテレビで観ていると、テレビ場面の周りに見慣れた壁や洗濯物などがあったりして、なんとなく現実に引き戻されがち。CMもあるし。どうしても白けるんだよなあ。映画館の魅力というのは、画面の大きさや音響だけではなくて「映画に集中できる環境」もあるのです。
 とくにLOTRは、映画館向き。
 テレビで観て「こんなものか」と思ってもらいたくないなあ。
 ほんと、映画館だと全然違うから。
 もちろん、テレビで観てもそれなりに面白かったんだけど。


(2)灰色のガンダルフ

 あらためて観ると、この賢者はけっこう隙だらけだったりするのです。
 雪山を越えようとして、サルマンの山崩し攻撃でアッサリルート変更。しかし、仲間の意見が割れて「それでは、指輪を持つものに決めさせよう」なんて、夕食に行く場所が決められなくて、子供に決めさせるお父さんじゃないんだから…
 さらに、坑道で扉を開けられずに頭を抱え込むガンダルフ。
 まあ、こういうふうに、キャラクターが「万能じゃない」ところが、LOTRの魅力なわけだけど。
 ポイントではキッチリ締めてくれてるしね。


(3)旅の仲間

 最初にみんなが集結するシーンは、いつも泣けてきます。
 みんなけっこう個性的といえば聞こえがいいが、アクが強くてワガママ。
 そういうところがまた、「人間的」なわけですが。
 レゴラスを最初に映画館で観たときには、このカッコいい人(エルフだけど)は、誰?と思ったけど、今となっては、オーランド・ブルームはメジャー街道一直線。
 レゴラスに関しては、あんな至近距離から弓使わなくてもいいんじゃない?とか思わなくもないけど、ああいうのがエルフのスタイルなんだろうなあ。
 エルフといえば、エルロンドを観るたびに、エージェント・スミスを思い出してしまって、どうも信用できないような気がしてしまいます。
 先入観というのは、恐ろしいものだ。


(4)指輪の魔力

 「タイタニック」で、ものすごく高価な青い宝石のはずなのに、あまりに安っぽいガラス玉みたいで興醒めしてしまったことがあるのだけれど、ああいう「妖しい宝石」というのをビジュアル化するのは、けっこう難しいことなんだろうなあ、と感じる。今回の「力の指輪」は、絵的には、ほんとうにシンプルかつ地味なんだけど、まあ、それが逆に「こんな指輪でも、人間(もしくは他の種族)の心が簡単に操られてしまう」というのを強調する意味では、あれでいいのかもしれない。
 僕はたぶん、知らなかったらあれが道に落ちていても拾わないような気がするけど。


(5)指輪の解釈

 ピーター・ジャクソン監督は、「指輪は自由を失うことの象徴」とコメントしていたけど、僕は、「欲望と猜疑心の象徴」だと思うのです。解釈としては、そんなに違わないのかもしれないけど。あの指輪の怖さというのは、「本当は何の魔力がなくても、そういう思い込みで、みんなあの指輪を奪い合って破滅していくのではないか?」という怖さ。
 この時代だからこそ、ジャクソン監督は、あえてその解釈をしてみせたのかもしれないけれど。


(6)サムとフロド

 僕が最初にこの映画を観たときに、サムというのはなんとなく居心地の悪いキャラでした。最初から「フロドさま」と使用人根性丸出しの態度で、今の日本に生きる僕からすれば、そんなに自分を卑下しなくてもいいのに、なんて思ったり。そういうのは、日本人的平等主義観による偏見なのかもしれませんが。
 でも、この物語は、サムの自我の成長の物語でもあるのです。
 最初は巻き込まれて付いてきたサムが、使命に立ち向かおうとするフロドの姿に打たれて、自らの意志で(ときには、死の覚悟も示して)「付き人」から「仲間」になっていく。「旅の仲間」の最後の「サム、お前がいてくれてよかった」というシーンは、ベタベタなんだけど、毎回感動します。


(7)全体として

 本当に映像と音楽が素晴らしい映画なのです。ストーリーについては、この第一作「旅の仲間」は、どうしても状況説明に割かないといけない部分が多すぎて、やや場面転換が早すぎ、盛り上がりに欠ける印象があるかもしれない。最後の場面も、なんとなく中途半端(これは原作でもそうなのだけれど)
 「説明的である」というのは微妙なところで、「指輪物語」に子供のころから親しんできた西洋人ならともかく、多くの日本人にとっては、これでも説明不足な所もあると思うのです。でも、これ以上説明的にもできないし、難しいところ。

 でも、少しでも「面白い」と感じるところがあったら、ぜひ第二作「二つの塔」を観ていただきたい。こちらのほうは、「説明しなくてはならない呪縛」から逃れられているために、より「面白い」作品になっています。エルム峡谷の攻防は、映画史に残る名場面だと思いますし。


(8)愛だよ、愛

 番組の最後に「出演者からのコメント」がありましたが、ピーター・ジャクソン監督はじめ、キャスト・スタッフは、みんなこの作品に愛情を持って接しているんだな、ということが伝わってきました。
 世界中の「指輪」のファン(あるいはマニア)たちが、多かれ少なかれ不満を抱えながらも、この作品を「許せてしまう」のは、なんといっても、この作品には「同じファンとしての愛情」を感じるからだと思います。


 いろいろ書きましたが、「王の帰還」のアカデミー作品賞と日本での大ヒットを願ってやみません。
 ほんと、「ロード・オブ・ザ・リング」は、「映画館で観るべき作品」だから!


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