ありがとう、スティルインラブ。 - 2003年10月19日(日) スティルインラブ、牝馬三冠達成!! 僕がこの馬に惚れたのは、桜花賞のトライアルレース、チューリップ賞だった。 このレースで、一番人気に推されたスティルは、最後の直線で前を塞がれてしまったのだ。 なんとかコースの外側に持ち出してから、すごい伸びを見せたが時既に遅く、結局、オースミハルカの2着に終わっった。 しかし、僕はこのレースを見て、「この馬は強い!」と確信した。 外に出してからの圧倒的な差し脚と、なんといっても、一度狭いところに押し込められて失速してからの再加速。 馬というのは繊細な動物だから、一度不利を受けると、そこから気持ちを切り替えてもうひと伸び、というのはなかなか難しい。まさに、この馬の勝負根性に痺れたのだ。 (そういえば、皐月賞でネオユニヴァースが直線の内側の狭いところをこじ開けて伸びてきたのも凄かった) 走るのが速いというだけじゃない、前の馬を抜こうとする気力。 全盛期のナリタブライアンみたいに、普通に走れば絶対能力で他の馬をぶっちぎれるような馬ならともかく、名馬を名馬たらしめているのは、こういう勝利への意思の力が大きいと思う。 もちろん僕は、桜花賞ではスティルを本命にした。 スティルは、先行して直線突き放すという強い競馬で、一冠目を獲得。 僕には、ここは確勝という自信があった。 2着は穴馬だったのだけれど、僕は枠連を買っていたため、なんとか的中。 そして、オークス。 僕はスティルを信じられなかった。 ビックバイアモンの妹、ということもあり、府中の2400mはいかにも長いだろう、という先入観を持っていたのだ。桜花賞のレースぶりも、前に行きたがっている馬に最後にゴーサインを出す、というレースだったし。 そして、アドマイヤグルーヴの三代制覇に浮気してしまったのだ。 しかし、結果はスティルの快勝。 中段後方に控えて、長い直線でキッチリ差し切る、という強い競馬だった。 2着は、またも人気薄のチューニー。 一番人気のアドマイヤグルーヴは、出遅れから直線最後方になってしまい、少し差を詰めはしたものの見せ場のない7着。 アドマイヤとチューニーの馬券を持っていた僕としては、この浮気は高くついたような気がした。 そして、今回の秋華賞。 トライアルで、マイペースで先行するヤマカツリリーをきっちり差し切ち勝ちという強い競馬を見せたアドマイヤグルーヴと+22キロと入れ込みで、不完全燃焼の5着に終わってしまったスティル。 でも、僕はスティルインラブを信じることにしたのだ。 ひとつは、「Number」のこんな記事を読んだから。 (直線前が詰まって負けたチューリップ賞の後のエピソード) 【幸「ゴールに入った瞬間、降ろされる(次のレースから、他の騎手に替えられる)ことを覚悟しました。先生(調教師)はカンカンに怒っているだろうし、できることならこのまま馬とどこかへ逃げてしまいたいって……」 けれども、検量室の前で人馬を出迎えた松元(スティルインラブを管理する調教師)は、全然怒っていなかった。それどころか笑みさえ浮かべて、「この経験を次に生かしてくれればいいから」というのだ。すぐに電話をかけてきたオーナーも、責めの言葉を口にするかわりに「本番(桜花賞)で頑張ってくれよ」と励ましてくれたという。打ちのめされていた幸は、2人の温情に身が震えるような感激を覚えた。】 あのレースを観ていた僕でさえ、「あ〜あ、やっちゃった…」と思うような騎乗だったのですから、乗っていた本人の落胆は大きかったでしょう。 でも、それを温かく許してくれた周りの人々の情が、この人馬を強くしたような気がするのです。もちろん、その失敗がトライアルレースだったから、という面もあるでしょうけど、1着と2着では、一千万以上の賞金の差があるわけですから。 そして、もうひとつは、僕の身辺に起こった出来事。 要するに、別れるかどうか?という岐路で、がんばってみる、という選択をした直後に、僕の好きなこの馬を応援しようと思ったのです。 それはもう、勝手な思い入れでしかないのだけれど。 レースは、4コーナーでのやや強引とさえ思えるような幸騎手の仕掛けに応えたスティルインラブが、直線で粘るマイネサマンサをとらえ、迫るアドマイヤグルーヴ以下を振り切って、見事にメジロラモーヌ以来17年ぶりの牝馬三冠を達成しました。 僕にとっても、ナリタブライアン以来のリアルタイムでの三冠馬、牝馬では初めてです。 おめでとう、スティルインラブ。キミに会えてよかった。 ときどき、現実に裏切られることの多さに、寂しくなることがあります。 でも、競馬は、ごくたまにだけど、信じることの素晴らしさを教えてくれるのです。 まあ、競馬以外のところで学べ、って気もしなくはないですけどね。 ...
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