蛍桜 |
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Purple Train |
小説も見つけたので転記。 こっちは、11月10日からにします。 久々に読んだけど、初めて読んだと思うレベルに覚えてない。 いつ書いたか分からないけど、一応htmlの日付は2007/03/17だった。 3/15を過ぎた当たりに書いたってことは…ふむ…。 誰のことを思って書いたのかよく分かる内容である。 そして男女の話かと思ったのに「彼」って… もしかしてこれ「僕っ子」かなぁ。。。 そういえば私の昔の一人称は「僕」だったしね。うーむ。 と思ってたらあとがきもあったので最後に載せときます。 ----------------- 友達が、死にました。 といっても、顔も見たことのない人だったけど。 太陽のように・・・というとありきたりだけど、本当にあったかくて僕の居場所を作ってくれた、大切な、大切な友達でした。 【Purple Train】 慣れない電車を乗り継ぎながら、見慣れない景色を何回も眺めた。空は絵の具で描いたかのような薄いブルーだった。筆に水を多くつけすぎたかのように薄すぎて、水を一滴垂らしてしまえば、溶けてしまいそうなほどだった。普段はあまりみない太陽も、今はあんなにも空高くで笑っていて、もし君とあの太陽を見ることが出来ていたら、何か変わっていたのかなぁ。なんて、無意味な思考を巡らせる。太陽の光が窓越しの僕を照らしつけて眩しかった。 君が僕の前から消えて、一週間が経ったころ、僕の携帯に一通のメールが届いた。それは君の母親からで、内容は、君はもうこの世を去ったということだった。しばらく画面の中に君が居ないことに少し疑問を抱いていながらも、忙しいのかな、程度にしか思っていなかった僕の心臓は、飛び跳ねるという表現では間に合わないほど、暴れまわった。生きていた頃の君は、ネットという世界の中でもしっかりと息をしていた。僕は、その息吹を感じたことが幾度もあったよ。あったはず、なのに。君の気配らせか、母親の気配らせかは分からない。けど、君の母親は、僕に連絡をくれ、葬儀にも来ないか、と言ってくれた。その言葉が素直に飲み込めなくて、全てが嘘なのだと思っていた。でも知らない駅で電車を降り、説明された道どおりに行くと、確かに葬儀が行なわれている一軒家があり、そこの表札には、僕が知っている君の名前が掲げられていた。表札の横を通り過ぎ、少し中を覗いてみると、白い布がかけられたテーブルの前には女性が2人立っていて、少しも笑っちゃいなかった。これは、僕をからかうための嘘なんかじゃないって、この時気付いたんだ。でも、ここまで現実を突きつけられても、まだ信じたくなかった。だって、いつものように君が笑ってからかっているんじゃないかって、僕と会う口実を作ってくれたんじゃないかって、夢を見ようとしていたんだ。でも夢を見るには、あまりにも現実的すぎて、あまりにも悪い夢だった。受付を通してもらって、部屋の中をそっと覗いた。すると、黒い喪服に身を包んだ人たちが、背中を丸めて座っていて、僕の心臓は小さく、ドキンと鳴った。これはエキストラか何か?君ってそんなにお金持ちだったっけ。はは。悪い冗談だなーって、僕は笑う準備をしていた。でも、飾られている、というよりはそっと置かれている一つの写真を見た時、これは嘘じゃないんだなって信じるしかなかった。今まで一度も見たことのなかった君の顔。いつか会おうねと約束していたのに。こんな形で会うなんてありなのかい?額の中に飾られて、黒いリボンがつけられているその顔は、葬式には似合わないくらい明るかった。そう、やっぱり君は、太陽みたいだった。 額縁の中で、君の瞳はきらきらと輝いていた。 不思議と、誰も泣いてはいなかった。誰もが実感のない中、ふよふよと生きているんだろう。誰もが彼が死んだことを認めたくないと、心の中でもがいているのだろう。それとも強いのかな。僕とは大違いだ。 「遠いところから、わざわざありがとうございます」 部屋を覗いているだけで、なかなか入らない僕に、後ろから少し痩せた女性が声をかけてきた。 きっと母親か親族なんだろう、と分かった。だって、君の太陽が、この人にも見えたんだ。 「空いているところにどうぞ」 無理に笑顔を作ったその女性は、細い腕を伸ばし、手で丁寧に案内してくれた。この人の目には僕はどんな風に映っているのだろう。君が太陽なら、僕は月だ。この場にはふさわしくない人間だ。 君との思い出を語ろうと思っても、とても他人には語りづらかった。理解をしめしてくれる人はいないだろうし、僕たちが感じていた絆を伝えるには、言葉はちっぽけだった。僕たちの関係は友達という言葉じゃ足りないくらいだったのに、それ以外の言葉がひとつも見つからなかった。でも確かに君と過ごした時間があって、それが現実じゃないと言われようと、僕の中には存在した。その一つ一つの温もりを辿っているうちに、葬儀は着々と進んでいた。僕はただひたすら、君ともっと早く会いたかった、と嘆いているだけだった。 人々が立ち上がり、一人ずつに白い花が渡される。みんなが、涙を堪えて、棺の中に添えていく。一声ずつかけて。 「よくがんばったね」 「寂しくなるねぇ・・・」 誰もが、君のことを想っていたよ。君は本当に慕われていたんだろうね。僕の居場所になってくれた君。優しくて、でもすぐ泣いて、意地っぱりで、それでもやっぱり大好きだった。僕の番が来て、棺に近づく。初めて見る君の顔。白く化粧されていて、きれいだった。君には白が似合うね。なんでだろう。 君の頬に触れたかったけれど、冷たさを知るのが怖くて手をひっこめた。もっと君の近くに居たかったけど、見慣れないその顔に、僕の知っている君を重ねると、何か不思議な気持ちに覆われて、一歩下がるしかなかった。 文章でしか交わしたことのない会話。それでも、君と僕は、確かに繋がっていたよね。 君の顔は、想像していた以上に美しかったよ。ねぇ、僕の顔も見てほしかったな。そんでもって、いつもやっていたみたいに、ばかなこと話して笑いたかったな。君の笑い顔はきっと眩しすぎるんだろうな。一度でいいから、見てみたかった。 棺が車に運ばれ、さきほどの少し痩せた女性もタクシーに乗って行ってしまった。僕は誰にも挨拶せずに、つい数時間前に通ってきたばかりの道を、何も考えずに歩いて駅へと向かった。 電車に乗っても、相変わらず見慣れぬ景色が広がっていた。でも、これが君が今まで見てきた世界なんだと思うと、僕が見るにはもったいないように思えた。この景色、空気、全てを拾い集めて、そのまま閉じ込めておきたい感情に覆われた。太陽は傾いて、空は菫色に染まりかけていた。君には負けるけど、それでも美しい景色だった。 さあ、帰ろう。 夜は僕の時間だ。 君が太陽なら、僕は月さ。 君が頑張った分、僕もこれから頑張るから。 電車が僕の町に入ったころ、 涙が、 一粒、 零れた。 帰ってパソコンをつけても君がいない。ただそれだけなのに。 骨だけにされた君の肉体は、今頃灰となって空気に染み込んでいるだろう。 明日になればそれを吸い込んだ太陽が、いつも以上に僕を照らすだろう。 僕は君を感じながら、君の光を受けて、輝いていくよ。 画面の中の君へ。 僕たちを言葉で表すなら 友達でも親友でも、ましてや恋人でもなかったけど。 君がいなきゃ生きていけなかったよ。 だから言わせて。 ありがとう。 菫色に染められた電車は、沈みかけている太陽を追うように、ただひたすら走っていた。 ------------------------ あとがき ふと頭の中を過ぎった話。 夜中に思い立って、朝方までには書き上げました。 今回は「頑張ってる表現(何それ)」を気にせずに、書きたいように書きました。 ひさしぶりだなーこうやって思ってることすらすら書いた小説って。 最近の小説は一行ずつで止まって、読み返して、表現を変えていたけど 今回はそのままで。ありのままで。書いていきました。 遺書を書こうとおもったのが、この小説のきっかけかな(笑) やっぱり遺言には、今の携帯メモリーに残っている人全員に 私の死を教えてほしい、ってことが書きたい。 できるならメッセに登録している全員にも(笑) でも親は、機械系にうといから、よぉわからんだろーな。 だから、遺書には、連絡してほしい人の連絡先を全部書くべきか? なんて真剣に考える。 私の日記や、詩や、小説は、私の死んだ後も残していてほしい。 私が生きた証を、残していてほしい。 でもそれが誰かの足枷になるのなら、構わず消してほしい。 いなくなっても分からないネットの世界で、私の前から消えた人もいた。 多分あの人はもうこの世にはいないんだろうな。って分かる人もいるけど ただネット離れしただけかな、って思う人もいるからなんか微妙で。 今は私も、あの頃のようにネットにさほど依存はしていないけど、でも現実の世界でよりも ネットの世界でのほうが、いい人間関係を築けたと思う。 最近はネットにはあまりいないけど、でも、もうリアルに繋がった人は何人かいるわけで。 私は結局、ネットという環境で出会った大切な人たちに縋っているから。 やっぱりネットってすごいなーって単純に思う。 葬式にはリアル友達は一人も来なくていいから みんなには、来てほしいよ。いや、来てほしいってだけで遠いから勧めやしないけど。 ほら、私、会う直前になって怖気づいちゃうから、来てほしい、って言っても きっと本当に来るってなったら、どきどきすると思うんだ。 棺の中で、だけど(笑) だから来てほしいけど、来てほしくない。 ただ私が死んだことを知っていてほしい。なー。って思っただけ。 でも思えば自己満足だよね。死んだっていわれてもネットの友達はどうすることも出来ない。 ただ受け止めるしかない現実を突きつけて、どうしろっていうね。 私が受け止める側だったら絶対いやだ(笑) みんなが死んでも線香はあげにいかせてね(縁起悪い) もし私が死んだら、強い、でも弱い母親と、れいんのことは頼んだ(頼まれても・・・) あれ・・・これあとがきじゃなかったっけ・・・。 2007.3.17 |
2012年11月10日(土) |
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