| 蛍桜 |
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| 蛇と蒲公英 |
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私がほんのり笑顔を浮かべると 向こうの岸にいる君も笑った だけどその笑いは やさしいものじゃなくって 私を馬鹿にするものだった それでも私はあたたかさを感じて 川に飛び込もうと思った どうして飛び込むのかは分からないけど 君の元に行きたかったのかは知らないけど 結局最後には私は飛び込むのをやめたんだ 弱虫だね、って君が馬鹿にするけど 私は何も反抗しなかった 向こう岸にもし私が行ったとしたら 君はそこで待っててくれるはずが無いから きっと私が一生懸命そっちの岸にいっても 君はまた私の反対側の岸にいるんだ 私を近づけさせない どうして? そんなの分かりきったこと 私を試してるんだ 私を馬鹿にしてるんだ 別にあきらめたわけじゃない だけどもう飛び込むのはやめたんだ 私ばっかり君を追いかけても 私にはなんの利益もないんだから 君がこっちの岸に来るのを待ってるよ 君がこないなら別だけどね きっと私はしびれを切らして 君のメモリーを携帯から消すだろう それでも君を忘れれないから 君からきたメールを探して そこから君にメールを送るだろう そのメールにはなんて書くかな そんなのそのときになってみないと分からないけど 君はどこに行ってしまったんだろうね 私は君を探す事ができないんだね 君を連れ戻す事ができないんだね そしてもう君を追いかける事もさせてくれないんだ だって君は 向こう岸から消えてしまったから 君の姿が見えないよ 君の心が読めないよ どうしたんだろうって考えても それは私が心配してもしょうがないことなんだよね いいよ、待っててやるよ だから帰ってきて 別に私は誰かを意識しているわけでもなく 別に誰かのためって思ってるわけじゃないけど やっぱりさ 周りのことって気になるから 他人は他人だって 言い切れないところあるから この世の中は崩れていくんだよね 違うか 私の中のこの世の中が崩れていくんだ それも違う? すでに崩れてるんだよ 私の中の世の中ってもんは 崩れてしまえばいいんだ 私の中の世の中なんか だから崩してしまったの?私 誰に問うわけでもないけれど 答えが帰ってくるわけじゃないけど まあ 崩れてしまったもんはしょうがないね 蛇はずっと地面を這うの 羽根なんかもっていないから それでも羽根がほしいなんて馬鹿な考えしなかった それが俺なんだよ、と蛇はかっこつけた かっこよかった 蛇は舌をシュルシュルと前に出しながら 身体をくねくねさせながら 毒をもってるんだーっていいながら 他人を脅す でもそれが違う事に気付いたの その毒は自分を守るためだったんだ 蛇が羽根がいらないといった意味が なんとなくなら分かる気がした いつも地面を這う蛇は 空を憧れなかったといったら嘘になるけど やっぱり地面を這うのがいいんだと 本人がそう決意した理由が 私にはなんとなく分かった 蛇は道端に咲いた蒲公英と話した 蒲公英は「君は変らないね」と言った 蛇は「変ってるよ」と反抗した 「どこが?」って蒲公英は嘲り笑いながら聞いたけど 蛇は何も答える事が出来なかった 確かに変ったはずなのに 蒲公英に比べたら変ってないかもしれないと 口を閉じた 蒲公英はまた笑いながら 「僕はつい最近咲いたんだ、その後は空に飛ぶんだ 僕のまわりには変化ばかりさ、君はそんなことないだろ?」 と言った 蛇は何も言わなかった そしてそのまま蒲公英を後にした 僕はこれでいいんだ、地面を這うんでいいんだ 蒲公英みたいに空を飛びたいなんて思わない 僕はこのままでいいんだ これが僕なんだ |
| 2002年07月06日(土) |
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