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2003年10月20日(月) 間質性膀胱炎について

 過活動性膀胱(OAB)に関して自分なりにまとめていたのだが、どうもこちらも収拾がつかず、あまり自分もよく知らなかった間質性膀胱炎が、アメリカでは100万人以上いる、という記事を見たので、若干の解説と自分の勉強をする。

 女性の尿意切迫とか、違和感というのは結構外来でも遭遇するのだが、大半は細菌性膀胱炎である。
 ところが、そう高齢でもなく、検尿所見も異常なく、それでいて、医者からは気のせいです、と一括されてしまっていたであろう人々(女性が90%だそうである)の中に、間質性膀胱炎も潜んでいるのだ。

 間質性膀胱炎の症状は、頻尿と尿意切迫感で、時にはひどい痛みさえ生じる。
 具体的に表現すると「膀胱の中に火かき棒を入れてかき回された」「きゅーんとしみてすぐいかんと間にあわん」「もう膀胱をのけてくれ」とかそんな感じだ。

 2003年5月、京都で初の国際会議が開かれ、臨床的症状で判断する傾向が強まったとのこと。
 以前の基準では膀胱鏡でハンナー潰瘍もしくは点状出血を認めたりすることが必要であったそうだ。
 麻酔下水圧拡張時に筋線維のバンドが、尿路上皮の血管の血行を妨げ、痛みを生じ、水圧を解除してゆくと血行が再開され点状出血が起こるというのが典型的な所見だそうだ。
過活動性膀胱という膀胱平滑筋の過活動状態に対して、間質性膀胱炎は尿路上皮とか血行によるものと考えるとわかりやすいと書かれていた。

 そういえば、自分の患者さんにも、いくら抗コリン剤とかトフラニール使っても頻尿が治らない、初老の女性がいた。彼女には膀胱鏡も施行し組織検査もしたのだが、異常なしとのことだった(麻酔下拡張はしなかったなあ)。

 で、治療なのだが、一時的には水圧による拡張(下半身麻酔で膀胱内にゆっくり生食を1時間くらいかけて注入してゆき膀胱を進展させる。麻酔なしでは50ml程度の注入で苦痛と排尿が生じてしまう)が有効だそうで、これは膀胱粘膜下にあるGAG鎖にくっついたいろんな因子(サイトカインや成長因子)を一時的に遊離させるためと考えられている。

 ・抗コリン剤
 ・カプサイシン
 ・レジニフェラトキシン
 ・イミプラミン(トフラニール)
 ・DMSO膀胱内直接注入(C求心性繊維を脱感作しブロックする)
 ・抗ヒスタミン剤(肥満細胞を抑制する意味でIPDなどが有用視されているそうな)

 とかいうのが治療法だ。

 著者らはIPDの有用性を示している。14例中1回排尿量が平均87.5→179ml(4ヶ月後)という素晴らしいものである。

 知らないと診断には結びつかないのが間質性膀胱炎で、常にこの疾患も念頭において置かねばならない。

参考文献 

1)日系メディカル2003.10,p127-131「見逃される間質性膀胱炎」,上田朋宏(公立甲賀病院泌尿器科副部長)
2)間質性膀胱炎に対するIPD-1151T経口投与の有効性と問題点(J.Urol,2000,164;1917-1920,Ueda T et al.)


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