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2024年09月04日(水) 蒼天抗露(5日目)ラトビア・リガ(上)

 ホテルでのバイキングの朝食。今日は扁桃を見つけた。人生初の扁桃試食。味は桃そのもの。

 今日の午後はツアーバスではなく、自力でホテルまで戻る必要があるので、ホテルを出てすぐのところにある売店で予めトラム(路面電車)の1回券を買う。2.5ユーロと言われ払ったが、後で周囲のツアー客に聞くと、1,5ユーロの筈。ぼったくられたね、と言われる。

 ツアーバスで中央市場に向かう。倉庫のような建物の中が平屋の市場となっており、建物の外にも日よけのシートをかけただけの露店がひしめき合う。添乗員氏がぐるっと市場内を案内した上で、では一時間後に再集合、みなさん思い思いに買い物を楽しんでくださいと解散。ツアー仲間のうちの幾人かが露店の蜂蜜屋に集まっている。蜂蜜はなかなか使い切らないし、日本でウクライナ産のが買えるからお土産としては考えていなかったけど、腐るものではないし、せっかくだから買うかと、小瓶を2つ購入。「蕎麦の花」と「森の花」の2種。蕎麦の花の蜂蜜は黒い色をしており、独特のクセがあるそうでちょっと楽しみ。

 向かいの店舗では何やら森から採ってきたと思われる、天然きのこが売られている。全体が鮮やかな黄色で、傘の中央が窪んでいて、ひだが垂生している。きっと美味しいんだろうな。でも持って帰るまでの間に傷んでしまうし、何しろ生鮮品は帰国の際に検疫ではねられる。残念だが素通りするしかない。

 何としても買っておきたいのがチーズ。冬に手頃なワインのお供に塊をナイフでちびちびと切って食べるチーズはたまらない。できれば個性のあるのがいい。売り場を見つける。値札がついていて、20ユーロとか書いてある。多分1キロ当たりの値段なんだろうけど、これは、その場で塊を1キロ分に切り出して売りますということなのか、それとも、既に手頃な大きさに切り分けてあるものを秤に乗せて売るということなのか良く分からない。とりあえず前者の方式でも後悔しないように3種類だけ選んで現物を指差し、英語で「私はこれが欲しい。そして私はこれが欲しい。そしてこれが欲しい」と言う。店員は同じ場所に置かれている2種類のブルーチーズ(地が白っぽいものと黄色っぽいものがある)のどちらが欲しいのか聞いてくる。「両方!両方!」と答える。

 これで4種類のチーズを手に入れた。販売方法は後者であり、ひとつひとつの塊は1キロより小さかった為、思ったより安かった。その後同じ店員からさらに3種類チーズを買った。うちひとつは山羊チーズ。日本で山羊のチーズを買おうとすると大体1グラムあたり10円する。円が弱くなったとはいえ、日本の半額以下であることは間違いない。

 洋服なんかも売られている。ウクライナ支援もののTシャツとかないかなと品揃えをチラ見しながら通り過ぎるが、東京上野のアメ横の露店と同じで、センスと質が微妙な感じ。民族柄の幾何学模様を織り込んだ毛糸の靴下が売られている。これは洋服と違い、見た感じ品質はしっかりしているように見えるが、残念ながら今日も30℃を超えそうな勢いの気候のもとでは買おうという気は起こらない。

 最初に添乗員に率いられて行列になって素通りした酒屋を探す。パッと見た感じ、蜂蜜酒(蜂蜜を発酵させた酒)が売られていたようだが、見つからない。確か6ユーロと値段がついていたんだよな。6ユーロなら是非買って初めての味を楽しみたいところだが、集合時間が迫り、諦める。

 そういえば、昼飯用としてパンも買い込んだ。日本ではパン専門店でもあまり売られていないハードなライ麦パン。水に投げ込んだら沈むんじゃないかと思う程ずっしりと重い。多分おにぎり3個分くらい。

 全員が集まるのを待つ間、どこからともなくかもめが舞い降りた。日本の、東京や横浜で見かけるそれに比べ、大きく、デブと言っていいほどどっしりとした体格。街は河口に面しているとは言え、潮の匂いなどしないというのに。

 ツアーバスで旧市街へ。停車可能な旧市街沿いの車道でバスを降り、石畳の旧市街を歩く。歴史的建造物が至る所にあるが、それらのほどんどに、自国旗とともにウクライナ旗が掲げられている。添乗員氏、「はいっ、ここにもラトビア国旗とともにウクライナ国旗がかかげられていますね。でも、なにも自国の歴史的建造物にまでウクライナ国旗を掲げなくてもいいと思うんですけどね」

 この国が過去にソ連に併合されて国を失った歴史を知らないはずないのに、添乗員氏、この件に関してだけは本当に心魂が曲がっている。

 歴史的建造物が3つ仲良く並んでいる「3兄弟」、石畳の上にストリートミュージシャン、というか、楽器を持った2人の老人がいて、日本人観光客の一団に気付いたのか、なんと「君が代」を奏で始める。異国の街角で思いがけず聴くことになった君が代。お礼に、石畳の上に逆さになって置かれている帽子に小銭を投げ入れる。

 かつてバブル期に海外に行った日本人観光客がよく遭遇したという絶滅危惧種「絵葉書売り」が現れる。

「エハガキ、2ユーロ。ドレデモ2ユーロ。」

 私達が興味を示さないと悟ると、今度は別の外国人観光客に、その国の片言の言語で話しかけていた。そもそも写真はスマホでいくらでも撮れるし、絵葉書を郵便で誰かに送るなんてことも自分自身何年もしていない。世界中の人がそうなんだから、このおじさん、この商売で食っていけているのだろうかと心配になる。同情心で買ってあげようかという思いが脳裏をよぎるが、でも使い道のないものはやっぱり要らない。ごめんなさい、おじさん。

 そして、初日から数えると何度目かの大聖堂。添乗員はよく勉強しており、ステンドグラスの説明で、左側はドイツ騎士団による占領を、右側はスウェーデンによる占領を描いているという。ほかには、本堂内に置かれた錆び付いた大きな鶏の像について、本来大聖堂の屋根にあったものがソ連占領期に持ち去られ、何故か後にモスクワ郊外で捨てられているのが発見されたという逸話。しかしこの大聖堂は本堂そのものより、断然中庭が面白かった。

 どこかで発掘されたと思われる何かの遺物が無造作に並ぶ。最初にあったのは直径1メートルあまりの皿状の石。変な形をした魚が彫刻されている。(ラトビア人の話では、その魚とはチョウ鮫ですとのこと)そして、誰がいつ何の為に彫ったのか見当もつかない人面岩。現実の人間の顔よりはるかに大きな大岩に不細工で歪んだおっさんの顔。顔だけ。少なくとも偉人を顕彰しようとして彫られたものでなさそうということだけは想像できる。やはりこれが一番不思議。(後日、写真を見てもらったラトビア人の話では、キリスト教伝来前の古代の彫刻とのこと)

 そして極めつけは、かつてこの大聖堂のどこかに取り付けてあったものを取り外したものと思われる、鋳物で作られた双頭鷲の紋章。世界中の全ての双頭鷲のオブジェがこうなって欲しい。

 中世のギルド商館の建物に面した広場で徒歩ツアー終了。ここで添乗員付きのオプションツアー組と、フリーとに分かれる。一昨日は、途中までフリーのうちの数人でまとまって行動したが、今回は自分の行きたいところだけを確実に見て回る為、ホテルに戻るまで完全単独行動。


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