蜜白玉のひとりごと
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| 2007年06月27日(水) |
ああだこうだ/『猫と庄造と二人のおんな』 |
晴れが続くせいか、紫陽花は水分を失ってパサパサになっている。近頃咲き始めたノウゼンカズラのおいしそうなオレンジ色に目が行く。
谷崎潤一郎著『猫と庄造と二人のおんな』読了。これを読むのは確か2回目だけれど、前回読んだ時のことなど何一つ覚えていない。句読点の少ない流れるような文章を読んでいると、はたしてこれが地の文章なのか、それとも誰かの独白なのか、頭がぼーっとしてだんだんわからなくなってくる。庄造は妻の品子を追い出して、従妹の福子を新しい妻として迎える。この一件には庄造の母おりんと福子の父がかなりからんでいるのだけれど、品子としてはおもしろくないのものの、「ここはいったん敵に勝たして」ひとまず家を出る。その後ある目論見を持って、庄造が飼っている猫のリリーが欲しい、自分に譲ってはくれないか、と福子に手紙を書く。話はここからだ。
リリーはほとんど庄造の愛情を独り占めしている。当然おんな達はそれがおもしろくない。相手のおんなも憎たらしいが、それ以上にリリーが憎たらしいような気がしてくる。当のリリーはと言えば、ただ猫らしく、与えられた中で好きなように生きている。ああだこうだと気を巡らして騒いでいるのは、人間だけなのだ。
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