蜜白玉のひとりごと
もくじかこみらい


2006年10月31日(火) スライドショー

この時期になると不思議と思い出す。しんとした廊下、玄関のはめ殺しの窓、落ち葉を敷きつめた食卓、風に揺れる羊のモビール。そういうものがパッパッと頭の中に浮かんでは消える。スライドショーみたいに。ああ、そういえば。

そういえば、あの人たちはどうしているだろう。まだあの場所で、あの頃と変わらずに暮らしているのだろうか、とじんわり思い出す。

1週間ほど前から『流しのしたの骨』を読んでいる。家事の合間や通勤時間に途切れ途切れに、少しずつゆっくり、ときどき立ち止まって振り返ったり考えたりしながら。あきれるくらい繰り返し読んで、隅々まで知り尽くしたはずの物語。それでも、今まで何度読んでも腑に落ちなかったところが今度はすとんと落ちてきたり、すごくおもしろいと思っていたところがそうでもなくなっていたり、以前の自分と今の自分がほんの少しずれていることに気づく。慣れ親しんだ物語にはその時々のごく個人的な出来事も一緒に織り込まれていて、読むと途端にそれらが色濃く立ち上ってきて、こちらを息苦しくさせたりもする。

それにしてもなんだってこんなに『流しのしたの骨』が好きなのだろうか。「閉じた」家族のおもしろさがたっぷり描かれているからかもしれない。妙ちきりんだけれど、みんな大真面目。傍から見れば自分もこんな調子だろう。

相方に、何読んでるの?と訊かれ、流しのしたの骨、と言うと、あ、バイブルじゃん、と言われた。そうか、バイブルか。相方はこうも訊く。それ、怖い話?『流しのしたの骨』をホラーか何かと思っていたようだ。

明日から11月です。今年もあと2ヶ月。はやっ!


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