蜜白玉のひとりごと
もくじ|かこ|みらい
| 2005年03月16日(水) |
左手/『風の歌を聴け』 |
今月のひとりごとには「中学校の美術の教科書」がよく登場する。美術に対して特に思い入れがあったわけでもないのに、なぜかどうでもいいような細かい出来事のいちいちを覚えていて、ふとした拍子になつかしく思い出す。高校では芸術3科目(美術・音楽・書道)のうち書道を取っていたから、美術の時間の記憶は必然的に中学校のときのものになる。
記憶の中の美術室はいつも薄暗く、窓の外は灰色でぼそぼそと雨が降っているようにも見える。教室の蛍光灯は白々としていて、生徒のざわめきが聞こえる。背もたれのない木の椅子は座るとガタガタする。椅子には彫刻刀で削られた跡があったり、画鋲が刺さっていたり、さんざんな有様だ。窓側の大きなテーブルには電動糸のこがある。先生の指をすっ飛ばした糸のこ。
授業のはじめには必ずクロッキーをする。自分の左手をモデルに描く。使うのは芯だけを長く残した変な形に削った4Bくらいの濃い鉛筆。後にも先にも自分の左手をこんなにまじまじと見たのはこの美術の時間だけだ。毎回、手の形をいろいろ変えて描く。グーチョキパー。指をさしたり手首をひねったり、いよいよ思いつかなくなると、第三者の登場。消しゴムを指先でつまんだり、鉛筆を握ったりする。5分か10分の短い時間でさっと描き上げる。スケッチブックは回収され、採点されて戻ってくる。A◎からA○、A、A’(エーダッシュ)、同様にB、Cへと続く。うまく描けたと思ったときほど評価は悪かった。いい気になっているとしっぺ返しが来る。
『風の歌を聴け』読了。また忘れたころに読もうと思う。読んでいてビールが飲みたくなったので、帰りがけに最近のお気に入り「やわらか」を2本買う。1本は今日飲む分、もう1本は買い置き。
|