蜜白玉のひとりごと
もくじかこみらい


2005年02月11日(金) 便利なはずが/『パラレル』

長島有『パラレル』読了。バツイチ男と、複数の女を「パラで走らせる」独身男との友情物語。そしてときどき別れた奥さんも出てくる。別れてもなお、ふたりは友達のように仲良く見える。未練があるとか、やりなおしたいとかいうわけではないらしい。ひとりぽっちで誰も頼れる人がいない生活というのは人生の醍醐味に欠け、味気なく、男にとっても女にとっても心細くさみしいものなのだ。

時間が過去や現在に行ったり来たりするのでわかりにくかったけれど、全体としては楽しく興味深い話だ。かなり熱中して読んだ。話の筋からは外れているが、途中で思わず目を見張った箇所。

・・・大体が人は一日に三時間も働けば十分だと僕は思っている。する事も特にないのに数あわせでいる奴は帰った方がましだし、何時間も集中力を持続できるはずがない。携帯電話やメールに触れ、その便利さを実感する毎に思う。これで楽になって浮いた時間の分は、働かない方向に費やされればいいのに、世界は一向にそうならない。空いた時間を詰めて次の仕事をいれるようになっていくだけだ。・・・

そう!便利になっていろんな時間が短縮されたはずなのに、それに伴ってどんどん忙しくなっているように感じるのは気のせいか?もはや現代の生活のどの部分が「便利になったおかげで浮いた時間」にあたるのか、さっぱり区別できない。ゆとりのある生活はどこへ?

新しい便利を作り出そうとしている人たちには申し訳ないが、本当に豊かな生活は、目先の便利さを捨てたところにあるのかもしれない。それがどこなのか、今の私にはまだよくわからないけれど。そんな気がしてならない。


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