蜜白玉のひとりごと
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| 2005年02月07日(月) |
魚肉ソーセージ/『ジャージの二人』 |
長島有『ジャージの二人』読了。2度離婚して3回結婚した父と、失業して今にも離婚しそうな息子との、山荘での生活の様子が描かれる。帯には「アンチ・スローライフな日々」とか「関係をジャジーに描く」とか書いてあるが、全然そんなふうには感じない(帯の文句というのたいてい胡散臭く、声高で、中身を正確に表そうとか伝えようとかいう心がない)。父は山荘にいても、ただ単に魚肉ソーセージが食べたかっただけのことだ。
ジャージの二人は途中からジャージの三人になる。でもまたすぐ二人になる。著者はインタビューで、三人にしたのはよかったけれど、そうすると組み合わせがいくつもできてしまって大変で、結局一人は帰してしまいました、というようなことを言っている。でもあれはあれでよかった。離れかけた二人が一時でも寄り添うことができたから。
失業して離婚の危機にある息子は、話の中ではほとんど何もしない。書こうと思っていた小説も書かない。新しい職を探すわけでもない。不倫をやめさせようと妻を説得するわけでもない。何もしないけれど、それでも突き放した感じはない。彼はまだあきらめてはいないのだ。自分の人生を投げてはいない。もしかしたら、こういうときはこの男のように一見怠惰に、無駄な動きはせず、じっとしているのがいいのかもしれない。
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excite Books 長島有スペシャルインタビュー ジャージではじまる小説の書き方
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