蜜白玉のひとりごと
もくじかこみらい


2005年01月25日(火) なんという隔たり/『赤い長靴』

江國香織『赤い長靴』読了。文學界に連載されていたのは知っていたけれど、その時は一度も読まなかった。

連作短篇集という形が好きだ。同じ登場人物で話が流れていくのは長篇とも似ているけれど、長篇みたいにぐっとのめり込むことはなくて、ちゃんと息継ぎができる。ひとつの出来事をあっちから眺めたりこっちから眺めたり。そのとき妻は、こうでした。一方、夫はこうでした。なんという隔たり。

特に大きな事件が起きるわけでもない。いつもの暮らし。昨日とよく似た今日。なのにいったんその裏側に目を向けてみれば、こんなにもスリルに満ちている。ぞくぞくする。そして、ところどころ、思い当たる節がある。そんな、まさか。ねえ?

相方の名誉のために言っておけば、相方は床にバナナの皮を落としたりしないし、私の話はちゃんと聞いてくれるし、「うん」以外の返事もできる。まるで問題ない。「あなたとわたし」というよりも、「わたしたちと外側」の関係が問題なのだ。ふたりでいると、良くも悪くも閉じた世界になってしまうということ。望むと望まざるとに関わらず、ふたりは世界から隔離されて、気がつけばいつの間にかひとりぼっちになっている。

そういえば、赤い長靴なんて出てきたかしら。


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