Deckard's Movie Diary
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2008年10月02日(木)  アキレスと亀  イキガミ

『アキレスと亀』
北野武が登場する前と後では全く別の映画のような印象です。主人公・真知寿の少年期(演じる吉岡澪皇はとてもいいですね)、青年期は抑制の効いた演出でその映画文法も素晴らしく(北野武は上手くなりましたねぇ!)、実に良く出来ています。ところが、本人が登場する壮年期になったとたんに失速します。別の2本の映画を観ているようでした。とにかく、主人公がそれまでの人物像とまるで別人ですし、その行動にも全く魅力がありません。そりゃ、売れる売れないに関わらず芸術家なんてあんなモノなのかもしれませんけど、彼らの行動はハッキリ言って不愉快以外のナニモノでもないです。好きなことをやり続けられる人生は幸せなのかもしれませんが、巻き込まれる人間にはたまったもんじゃないですよ。好き勝手に生きたモン勝ち!みたいなストーリーなんてクソ喰らえです。だいたい、芸術家の誰しもが性格破綻者ではないですし、社会に対して適応障害でもないです。なんだか、恐ろしく底の浅い話を見せられたような気になりました。っつーか、北野武自身がスクリーンに登場すると完璧に“ビートたけし”ですね。

北野武はそろそろ監督業に徹した方が良いと思います。以前は映画文法が下手だったので自分が出演する部分とのマッチングに違和感は無かったのですが、ここまで手馴れてくるとチグハグな印象を拭いきれません。今回も、監督業に専念していたら、ここまで破綻することは無かったような気がします。出演した時に自分で自分を御しきれてない感じです。いい加減、誰か鈴を付けて下さい!




『イキガミ』
「忘れられた歌」「命の暴走」「最愛の嘘」の3本のストーリーから折り重なっています。どう考えても「忘れられた歌」が一番出来が良いと思うのでコレを上手い具合にラストに持ってきて欲しかったなぁ・・・っつーか、「最愛の嘘」のあの兄貴はなんなの?非情な闇金の取立屋のくせに、な〜にが死にたくないだよ!てめぇなんか、闇金の取立をやっている時点で生きてる価値ねーよ!苦しまないで死ねるだけ幸せだと思え!その辺りの描き方がメチャメチャ甘い!妹に罪はないけど、そのマンションは弱い者苛めをして作った金だぜ!この映画の中で体勢に影響の無い話なんだから、そんなに目くじら立てなくても・・・と、仰るかもしれませんが、そうじゃないでしょ!ダメなものはダメですよ!闇金の腕の立つ取立屋がどれだけの人間を自殺に追い込んでいるのか理解しているのなら、こんな描き方はしないし、大体そんな奴を主要キャラにしませんよ!どうして、もっと普通の人を取り上げないんですかね?こういう作りは映画人としては情けないですね。監督は『犯人に告ぐ』でちょいと面白かった瀧本智行。もう1本の「命の暴走」ですが、あまりに嘘くさいです。気持ちは分かりますが、話を作り過ぎです。全編を通して幼稚な印象は否めません。まぁ、中高生向けの作品かな・・・。


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