Deckard's Movie Diary
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2008年06月17日(火)  イースタン・プロミス  JUNOジュノ

『イースタン・プロミス』
ひとことで言い表すとしたら“クローネンバーグっぽいけどクローネンバーグらしくない”作品です。だからと言ってダメなワケじゃないです!っつーか、かなりの好感触です!前作の『ヒストリー・オブ・バイオレンス』でも、それまでの作風から比べるとかなりオーソドックスになっていたのですが、今作はさらに進化?しています。今までの作品群は多かれ少なかれ人間の潜在意識に潜む狂気の部分が核にあったのですが、今回はそういう部分も絡めながらも人間ドラマに重点が置かれています。おそらく、クローネンバーグは“命”とか“生”とか、それ自体が“狂気”と捉えているのでしょう。そう考えると、実にクローネンバーグらしい作品と言えるかも知れません。全編から滲み出る喪失感には圧倒されますが、同時に生への執着とも言える力強さも感じさせてくれます。個人的にはとある秘密が分かるまでは上半期ベストかもしれないと考えていましたが、個人的にはあの設定はちょっと常識的過ぎたように感じてしまい、あまりにクローネンバーグらしくなかったので拍子抜けしてしまいました。もちろん、それでも十分魅力的な映画ですし、特にサウナ風呂でのシーンは映画史に残る名場面なのは間違いありません!全身刺青だらけで異様な存在感を放つニコライ役のヴィゴ・モーテンセンは噂に違わず素晴らしく、デイ・ルイスがいなければなぁ・・・と思わせてくれます。また、常に微熱状態で影のある役が抜群に似合うナオミ・ワッツ、屈折した感情に支配されるヴァンサン・カッセルと、相手役も申し分ありません。

今作は『セックス・トラフィック』というイギリスのTVムービーや、秀作『題名のない子守唄』等でも取り上げられた東欧からロンドンへの悲惨な出稼ぎがテーマになっていますが、これだけ描かれているってことは社会的に相当問題になっているんでしょうね。

それにしてもロシア語訛りの英語って分かり易いですねぇ!ドイツ語訛りの英語といい勝負ですね!っつーことは、日本語訛りの英語との三つ巴か?まぁ、どーでもいい話しでしたね(苦笑)。



『JUNOジュノ』
“16歳の女の子が妊娠、いろいろありながらも命の大切さを知り、最後は頑張って良かったね!・・・ほのぼのと、泣ける・・・”みたいな内容かと思っていました。が、意外や意外、実に良く出来た映画でした。“命の大切さ”って、よりも“妊娠したことで見えてきたモノ”って、感じですね。個人的には「え、そっちに行くの?へ〜面白いじゃん!」という感じでした。やはり、親と言う者は子供を信じないといけないんですね。ジュノにとって一番大切なモノが見えてくる後半は見応えがありました。ただ、十代の妊娠について軽く考えているように見えるので(まぁ、妊娠しちゃったんだから、仕方ないじゃん!クスリをやってるよりいいかぁ!みたいなノリです)、その辺りがどうなの?と、言えなくもないです。でも、新しい命の誕生は人類にとっては喜ばしいコトですから、里親制度の熟成は悪いコトではないです。生みの親より育ての親とか、遠くの親戚より近くの他人とか言いますしね。

途中、重要な経緯がかなりマニアックな音楽系会話で進みますので、分からない人は大目に見てやって下さい。オイラは似たような経験があったので、よ〜く分かります(苦笑)。

主演のエレン・ペイジは相変わらず上手いですが、ちょっと達者過ぎるというか、今はもう少し不器用な方が大成するような気がします。監督は『サンキュー・スモーキング』でシニカルを極めたジェイソン・ライトマン。次回作も楽しみになりました。

<さて、つい先日以下のようなニュースが・・・>
『米東部マサチューセッツ州の人口約3万人の漁師町グロスターで、同じ高校に通う女子生徒少なくとも17人(全員が16歳以下)が一緒に妊娠、出産する「妊娠協定」を結び、実際に妊娠した。米メディアが伝えた。夏休みが始まるころには出産する予定で、一緒に子育てをすることも約束しているという。「妊娠協定」の舞台は、生徒数約1200人のグロスター高校。米タイム誌のインタビューに答えた校長によると、昨年10月ごろから、校内のクリニックに妊娠を確認に来る生徒が増えた。妊娠が判明すれば喜び、逆のケースではがっかりした様子を見せたため、理由を確認したところ、協定の存在が分かった。同じ高校の卒業生で1年生のとき出産した女性(18)によると、在学中、今回妊娠が判明した女生徒らと交流があった。女生徒らはこの女性のことをうらやましがり、「(子供が生まれれば)自分を無条件に愛してくれる相手ができると興奮していた」という。』

以上です。場合によっては後々映画になりそうですけど、その子供たちがキチンとい育たないとダメだろうね・・・( ̄。 ̄ )ボソ 『JUNO』の全米公開は昨年12月ですから、直接的な影響という意味では関係ありませんが、今のアメリカにはそういう風潮(十代の妊娠に寛容な部分)があるんですかね?このニュースの詳報が知りたいです。


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