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2003年09月10日(水) 灰とダイヤモンド 

灰とダイヤモンド 
Popiól i diament (Ashes and Diamonds)

1958年ポーランド ビデオ あり(ポニーキャニオン)
監督 アンジェイ・ワイダ
脚本 イエジー・アンジェウスキー/アンジェイ・ワイダ

製作年は諸説あったので、IMDbを参考にしました。


往年の名画、それも「不朽の名作」の誉れ高い作品について
自分の言葉で御紹介するのは至難の業です。
端的にいえば、
自らもレジスタンス活動の経験を持つワイダ監督が撮った、
いわゆる「抵抗三部作」の最後の作品で、
ビデオを借りれば、そのラベルには
あっさりと最後のオチまで書いてある始末です。
確かに、ラストシーンはかなり有名だと思いますが……。
(往年の名作についてはネタバレは解禁だと思っている方が多いようで、
正直、困ったことだと思います。
どんな映画でも、見たことがない人には「新作」も同然なのに…)


1945年、ポーランドの田舎町。
対ドイツテロリストのマチェク(ズビグニエフ・チブルスキー)は、
共産党の大物の暗殺を命令され、
教会に来るはずのターゲットを待ち伏せますが、
思い切りぶっ放した相手(2人)は全くの別人で、
ただの罪なき労働者だったのです。
彼がそれを知ったのはほんの偶然で、
泊まった宿の向かいの部屋に住む女性の
嘆き悲しむ姿によってでした。
この宿のクラークに詰めているおっさんが、
親近感を覚えたマチェクとあれこれ話すくだりは、
映画の中では、箸休め的にほっとさせると同時に、
後々涙を誘うことにもなります。


ドイツが無条件降伏した5月8日、「祝賀ムード」の中、
マチェクは再度、暗殺を実行しようとしますが、
宿の飲み屋で働くクリスティナ(エヴァ・クジジェフスカ)に
一目惚れし、彼女を口説き落とすと、
その計画から降りようとまで考えるのですが……

歴史的背景をある程度知らないと、
ちょっとわかりにくい点もありますが、
初めて目にしたときの年齢が若ければ若いほど、
その影響力のヤバさぐあいが増す、
とにかく、そんなタイプの「青春映画の傑作」であることは確かです。
想像力をかき立てる「灰とダイヤモンド」というタイトルは、
19世紀ポーランドの詩人ノルヴィッドの詩からとられたもので、
酒場を抜け出したマチェクとクリスティナが、
地下水道の壁面に彫られたその詩を
マッチの炎で読むシーンがありました。

マチェクが酒場にへしゃげた「マイマグ」を持参したり、
シーツが大量に干された中を、
手負いのマチェクが逃げまどったり、
映像作家たちにすぐに真似されそうなシーンも
たくさんありました。
確かに、そういうのはいろいろな意味で
とってもスタイリッシュではあるけれど、
それらから、「訴えたいこと」を読み誤らなければ、
もー、なんぼでも影響受けてちょうだいって話です。

マチェクは上官に当たるアンジェイという男に、
計画から降りたい旨伝えますが、
「何言ってやがる」という調子で却下されます。
そのくせアンジェイ自身、
ターゲットを本当に殺ってしまう必要があるのか、
さらに自分の上官に相談したりするのでした……。

感動が「痛み」となって残るような1本でした。
(注…朝の4時にたまたま目が覚めたからって、
勢いで見てはいけません)


※キーワード、みたいなもの
ワルシャワ蜂起
1944年8月1日、ナチス占領下のポーランドで
「国内軍」と呼ばれた地下活動組織がドイツ軍に対して一斉蜂起した。
ワイダ監督による「灰と…」の前作『地下水道』で描かれたのが
ワルシャワ蜂起の顛末
(とか言いつつ、実はこちらはまだ見ていないのですが)




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