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1664年9月8日、「ニューヨーク」という街が誕生しました。 そこで、ややニューヨークが舞台になっている映画を やや変化球でお届けします。
天使のくれた時間 The Family Man 2000年アメリカ ビデオ&DVD あり(パイオニア) 監督 ブレット・ラトナー(『ラッシュアワー』など) 脚本 デヴィッド・ダイアモンド/デヴィッド・ウェイスマン ニューヨークの超高級アパートに住む 絵に描いたようなヤンエグ(今どき聞かんな、この言葉) ジャック(ニコラス・ケージ)は、クリスマス・イブも仕事、仕事です。 そんな中、かつての恋人ケイト(ティア・レオーニ)から 電話があったと秘書から告げられますが、 イブなので人恋しくなったのだろう、くらいの考えで かけ直しもしませんでした。 ジャックには、13年前、キャリアアップのために ケイトを置いてロンドンに行ったという過去がありました。
ジャックは、勤め帰りに立ち寄ったコンビニで、 黒人男性(ドン・チードル)が、 ロトの換金を断られているのを見て、場を治めるため、 その“賞金”を自分が建て替えると申し出ます。 すると男は、意味ありげな言葉を残して去っていきました。 それが心にひっかかりながら、何とか眠りについたジャックは、 翌朝、生活やつれした金髪の女性と同じベッドで、 犬と、小さくて元気な女の子にたたき起こされます。 見覚えのない小さな家の寝室……とはいえ、 隣に寝ていた女性がケイトであることはすぐにわかりました。 じゃ、この女の子は誰?げっ、もう1人、赤ん坊までいる!
大あわてて車で家を飛び出したジャックは、 自分が本来住んでいる(はずの)アパートや、 自分が勤めている(はず)の会社に行きますが、 どこへ行っても、顔なじみのはずの人々から、 「あんた誰?変なまねすると警察呼ぶよ」的扱いを受けます。 どうやら、昨夜コンビニで出会った男の“仕業”のようですが、 元の生活に戻る方法は教えてもらえません。
ニュージャージーの小さな街で、小さな家に暮らし、 タイヤ安売り店を経営する義父を手伝うのが仕事。 妻ケイトはボランティアの弁護士で、 仲間とボウリングをするのが大好き! 当たり前に着ていたブランドもののスーツを買うのも 夢のまた夢で、 金持ちとは言えないけれど、家庭を大切にする男。 13年前、ロンドン行きを急遽取りやめ、 ケイトと結婚することを決めたジャックの人生は、 そんなふうでした。 それは当然、ヤンエグとしての生活体験を持つジャックが 望んでいたものではありませんでしたから、 ただただ、戸惑うばかりです。
人生の分岐点で、こういう選択をしていたら?という仮定は、 確かに映画になりやすい素材ではあります。 この映画も、その辺は特に目新しいものではありません。
でも、この映画の褒められていいところは、 自分を敗残者だと思っている人間が、 ああ、あのときああしていたらなあと嘆くのではなくて、 自分は成功者だ幸せだと思っている人間が、 他人(特に負け組)の人生を「くだらない」ものとして見下しがちで、 それがどんなに傲慢であるかに気づくべきだということが きちんと描かれている点だと思います。 ケイトにしても、ジャックと結ばれなかったことで 歩んでいた人生があったわけですが、 この辺のフォローも怠りありません。 そして、解釈のしようはいろいろあれど、 希望を見出さずにはいられないラストシーンを迎えます。
もしもジャックが、原題のとおりのFamily Manに なっていたら?というシークエンスで、 ジャックが、ふと見たケイトの顔を改めて「美しい」と感じ、 それをきっぱりと口に出すというシーンがありました。 (何せティア・レオーニですから、美しいに決まっているのですが) たとえ所帯やつれした糟糠の妻にだって、 惚れて一緒になった女性なら、 そんなふうに思える瞬間があるはず。 なかなか「突いている」シーンだと思いました。
ところで、邦題の「天使」って、 やっぱりドン・チードルのことでしょうか。 往年の名作『素晴らしき哉人生!』に置き換えて考えれば、 そういうことになるのでしょうが、 何も無理やり「天使」を引っ張りださなくても…… という役どころでした。
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