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2003年09月01日(月) |
ボウリング・フォー・コロンバイン |
ボウリング・フォー・コロンバイン Bowling for Columbine 2002年アメリカ ビデオ&DVD あり(タキコーポレーション) 監督・脚本 マイケル・ムーア(『ロジャー&ミー』など)
ユーモアを多分に含んだドキュメンタリーですし、 ことしの話題作の1つなので、 「粗筋」を詳らかにするのは野暮というものでしょう。 ……と勝手に判断し、感想を中心に書かせていただきます。
個人的には、アカデミー賞授賞式のときに 口角泡飛ばす勢いでブッシュを非難するM.ムーアを見て、 パフォーマンスくささにちょっと引いてしまったのですが、 本編を見て、「ああ、この人は本気だ」と思えました。
言っていることはもっともだし、 アカデミー賞授賞式の場で政治的発言するのは 何もこの人が初めてではないわけですが…… 主演男優賞を受賞したエイドリアン・ブロディの 知的で静かな、各方面に配慮しつつも言いたいことを伝えた コメントと比べてしまったこともあったかと思います。
1999年4月20日、 コロラド州リトルトンのコロンバイン高校で 2人の少年が、生徒12人と1人の教師を射殺し、 自らも自殺を図るという事件が勃発しました。 メディアはこのショッキングな事件に対し、 やれアニメ「サウスパーク」が悪い、 ロッカーのマリリン・マンソンのせいだと、 とにかく、どっかに責任を押しつけようとしますが、 少年は事件の朝、ボウリングをしていたのです。 あれれ…… じゃ、何で誰も「ボウリングが悪い」って言わないの…?
かわいい?キャラが毒を撒き散らして人気の 「サウスパーク」の作者の1人マット・ストーンは、 実はコロンバイン高校の出身でした。 退屈な町での退屈な高校生活での鬱屈を、 銃の乱射ではなく、アニメ製作で発散したというわけです。 事件に関わった2人の少年が好んで聞いていたという マリリン・マンソンにしても、 悔しいが自分の曲よりも大統領の挙動の方が よっぽど社会的な影響があると認めています。
アメリカの歴史は殺戮で血塗られている…というなら、 歴史的におぞましい大量殺戮は、他の国でも起きています。 家庭崩壊や離婚率の高さはイギリスの方が深刻だし、 失業率の高さでいえば、 それが貧困に直接つながるかどうかの差こそあれカナダはアメリカの倍。 バイオレンスが売りのゲームは、日本製が多い。 なのに、何がどうしてどうなって、アメリカは銃による暴力が こんなに横行しているんだろう?
ムーアはこんな切り口で素朴な疑問を積み上げ、 アメリカばかりがどうして銃犯罪が多いのか、 さまざまな角度から検証していきます。 殊に、すぐお隣で、しかも下手するとアメリカ以上に 個人的に銃を所持するのが簡単なカナダとの対比に 興味深いものがあります。
アホでマヌケな?アメリカの白人たちが、 黒人やヒスパニック系の人々に抱いている 差別・偏見から来る恐怖心のようなものも、 そこにはしっかりと描かれていました。
人それぞれ、あらゆることを考えずにいられない作品ですが、 私は、 「偏見を持たずに何かを見るためには、 一旦、自分の中にある偏見の芽と対峙しなくちゃなぁ」 ということを再認識しました。 でないと、いけしゃあしゃあとリベラル派を気取り、 実は人種的マイノリティへの差別意識を 明らかにするような発言をしていても、 それに自分自身で全く気づいていない、 そんな、作中にも登場する某氏のようになってしまいそうです。
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