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2003年05月14日(水) |
ベイビー・イッツ・ユー |
ベイビー・イッツ・ユー Baby, It's You 1983年アメリカ ジョン・セイルズ監督
1980年代、日本では「レトロブーム」がありました。 いわば懐古趣味というやつで、 絶対に「その当時」を知らないような若者が、 大昔のファッションや音楽をもてはやしていました。 だから、50〜60年代のヒット曲群である いわゆるオールディーズと呼ばれる音楽も ワンクッション置いて、「80年代によく聞いた」という方が 多いのではないでしょうか。 (1968年生まれの私もその1人ではありますが)
そんな頃の、アメリカでのムーブメントは 正確には知りませんが、 「オールディーズがモチーフになった映画」 というのがなぜか多くつくられていたことはよく覚えています。 ※『スタンド・バイ・ミー』『ペギー・スーの結婚』 『グレート・ボールズ・オブ・ファイヤー』『モナリザ』などなど
本日御紹介する『ベイビー…』もその1つで、 1961年、女性4人組シレルズ(シュレルズ)が 不実な恋人への思いを切なく歌った同名の曲をヒットさせました。 …なのですが、実はビートルズのカヴァーの方が ずっと有名かもしれません。 でも、女性ヴォーカルで聞いた方がぐっと迫るものがあると 個人的には思います。
言っちゃナンですが、なんてことない話です。 舞台は1960年代のアメリカ・ニュージャージー。 イタリア系労働者階級の少年シーク(ヴィンセント・スパーノ)は 同じ学校に通うユダヤ系のお嬢様ジル(ロザンナ・アークェット)に 一目惚れし、イタリア男の押しの強さでアプローチします。 「イエス・キリストとフランク・シナトラを崇拝する」という彼は、 歌手を夢見ていました。
周囲の好意的とは言い難い目も気にせず、 それなりに幼い愛を育んでいきますが、 やがて高校を卒業し、ジルが女子大へ進学すると、 2人の仲はギクシャクし始めます。 ジルは大学の仲間に、 シークのことを「マヌケな昔の男」として 強がって露悪的にしゃべるようになりますが、 でも、それは果たしてまことの本心なのか、 それとも、「つくられた本心」なのか……? シークは歌手への夢を捨てず、 ジルへの思いもまだ強く持ったままでした。
ロザンナ・アークェットが、 イカニモなJAP(ユダヤ系アメリカ人のお嬢様)を好演していますが、 未だに実年齢10歳も年下の人と「元同級生」や「夫婦」を演じる彼女は、 『微笑みをもう一度』でサンドラ・プロックの元同級生、 『隣のヒットマン』でマシュー・ペリーの妻、など この当時から、3つ年下君と恋人同志を演じていたのですね。 ちなみに、彼女自身は1959年生まれ、 スパーノは1962年生まれ めちゃくちゃ若く見えるというわけでもないのですが、 あどけなさと色気が同居したコケティッシュな雰囲気に、 ああ、これは一目惚れするわ……と思わせるだけの 説得力はありました。
対するスパーノは、この映画の後、 『グッドモーニング・バビロン』(1987年)で注目されますが、 情熱的な黒髪・黒い瞳が印象に残る どっから見てもラテンのオトコという感じの男前で、 こんな彼の口から出る「フランク・シナトラ」の名前には、 独特の雰囲気さえありました。 実際、映画のタイトルが『ベイビー…』でありながら、 見終わった後に最も心に残っている曲はというと、 シナトラの『夜のストレンジャー』であることを否定できません。 いい役者だと思うのですが、 最近、その活躍を日本では見ることができないのが 非常に残念です(はっきり言ってファンでした)。
5年後、10年後の状況を想像したとき、 幸せな家庭を築いて、 よき小市民としてうまくやっているということが 何とも想像しにくいカップルではあります。 それでも、確実に愛し合っていた時代があって、 また、それを2人とも一生忘れないんだろうな、と思わせる、 古い傷跡にも似た幼い恋愛が、 甘く切なく描かれた好編でした。 それにしても、20歳過ぎた2人が高校生を演じている映画で 「幼い」という言葉を使うのは抵抗ありますな…
あ、それでもって、何故本日の映画がコレかといいますと、 1998年5月14日、フランク・シナトラの命日なのでした。
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