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2002年11月13日(水) 自転車泥棒

1974年11月13日、
イタリアの映画監督ヴィットリオ・デ・シーカが亡くなりました。
(享年72歳)

自転車泥棒
Ladri di biciclette (The Bicycle Thief)

1948年イタリア ヴイットリオ・デ・シーカ監督


貧乏くさい映画ですが、それでいいのです。
求めて貧乏くさくしているのですから…

↑この映画を身も蓋もなく表現すると、
こんな感じではないでしょうか。

プロの俳優ではなく、
演技経験のない「その辺の人」を俳優として起用し、
いわゆる「レアリズモ」を追求した作品でした。

敗戦後の貧しいイタリアで、
やっとポスター貼りの仕事にありついたアントニオは、
仕事のために自転車が急遽必要になったので、
シーツを質に入れて、何とか用意します。
(このシーツ、私の記憶が確かなら、新品でなくてベッドから剥いたものだったような…よく質草になるもんです)
仕事には、6歳の息子ブルーノも一緒に連れていましたが、
その子供がちょっと目を離したすきに、
自転車を盗まれてしまいました。

警察は、そんなチンケな盗難はマジメに取り合ってくれないし、
1日じゅう探すために歩き回ってお腹はすくし、
自転車がなければ、翌日からずっとお腹を空かすことになるし、
本当に汲々とした状態に陥りました。

やっとやっと捜し当てたと思ったら、
その犯人が住む界隈の人間が町ぐるみで邪魔し、
取り戻せません。

そして、困惑も究極に達したアントニオは……

日本人である私には、
イタリア語の台詞回しの細かいニュアンスはわからず、
したがって、素人の起用でリアルさを出そうという意図は、
正直言ってよくわかりませんでした。
……と思う程度に、皆さんなかなかの演技を
見せてくれたと思うのです。

ブルーノが、父親に連れられて入った食堂で、
金持ちの娘らしい子が食事しているのを
物欲しげに見つめるシーンが印象に残りました。
彼女と同じようなものを食べたいけれど、
「あれだけ食べるには、いっぱい稼がないと」
と言われてしまって……。
「マンジャーレ、カンターレ、アモーレ!」の国で、
お腹を空かさなきゃならないなんてねぇ。
腹が減っては、歌も恋もままならんではないですか。
子供がひもじそうにしている姿を見るのは、
本当にいたたまれないものです。


ユリノキマリ |MAILHomePage