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2002年11月02日(土) |
ディープ・エンド・オブ・オーシャン |
間抜けな前振りで恐縮ですが、 明日は11月3日(文化の日)ということは、 ただいま読書週間の真っ最中なのですね。 読書週間…文化の日を挟んで2週間 10月27日〜11月9日
そこで本日は、 全米ベストセラーに材を取ったというこちらを。 といっても、私自身は原作は知りませんでしたが。
ディープ・エンド・オブ・オーシャン The Deep End of the Ocean 1999年アメリカ ウース・グロスバード監督 ジャクリーン・ミチャードの小説 『青く深く沈んで』が原作とか。 寡聞にして、 私はこの作家のことも、もちろん小説のことも 存じませんでした。
日本では一昨年、まだ幼い頃に新潟で拉致され、 9年間監禁されていた少女が保護されたことが 大変話題になりましたが、 非常にショッキングだったと同時に、 行方不明の子供を探し続ける親御さんたちにとっては ある意味「朗報」でもあったと聞きます。
一方、アメリカ映画を見ると、 ミルクカートンに行方不明の子供の写真が載っていたり、 行方不明の子供が生きていれば○歳で、 こんなふうに成長しているはずという シミュレーションによる写真が 作成されたりという場面をよく見ます。 いわゆる児童連れ去りが犯罪としていかに一般的であるかが 窺われ、はっきり言ってぞっとしません。
ベス(ミシェル・ファイファー)は、 カメラマンとしての仕事にも恵まれ、 優しい夫パット(トリート・ウィリアムズ)との間には 3人のかわいい子供たちもいる、幸せそのものの女性です。 7歳のヴィンセントと3歳のベンは(一番下はまだ赤ん坊)、 よく、ベンチチェストを使ってかくれんぼをして遊んでいました。
が、学生時代のクラス会に子供たちを連れて出席し、 ほんの一瞬、ヴィンセントにベンを託して席を外したスキに、 ベンが出席者のうちの誰かに連れ去られてしまいます。 FBIまで駆り出される必死の捜査のかいもなく、 ベンは見つからず、そのまま9年の時を経ます。 ヴィンスは、自分のせいでベンがいなくなったのだと 良心の呵責を感じ、その上、 母親ベスから「愛されている」という実感も得られないまま すっかり「反抗的で問題の多い16歳」になっていました。
その後、ベスたち一家は別な街に引っ越しますが、 たまたま芝刈りのアルバイトの売り込みに来た少年に、 ベスは非常に強い「何か」を感じました。 3歳で行方不明になったベンの、 成長シミュレーション写真にそっくりなのです。 彼はサムという名前でしたが、調査してみると、 実は9年前に誘拐されたベンであることがわかりました。 ベスの同級生だった女性が連れ去っていたのですが、 その後彼女はジョージという実直な男と結婚し、 “サム”ことベンをジョージに託して亡くなりました。 亡き妻の忘れ形見として、 愛情たっぷりにサムを育てたジョージでしたが、 やむなく最愛の息子を手放すことになります。
が、“本当の家”に戻ったはずのベンは、 どうしても一家に打ち解けることができません。 それはとりもなおさず、 ジョージとのいい父子関係を示していました。 紆余曲折の後、 やはりジョージのもとに“サム”ことベンを返すのが 一番いいのかもしれないと、 苦渋の選択を迫られたベスは……
どうしても「我が子を突然失った母親の悲しみ」が クローズアップされがちですが、 さまざまな人のさまざまな悲しみや悩みを心優しく描いた、 数ある「家族再生物語」の中でも佳作だと思います。 皆さんなら、どの人物に最も感情移入するでしょうか? 母親の気持ちになってしまう男子中学生や、 母親の愛情を渇望するヴィンセントと一緒に涙する中年女性、 悩み悲しむ妻に立ち直ってもらいたくて一生懸命努力するのに、 何を言っても言葉が届かないもどかしさを覚える夫 ……の気持ちになってしまう、 夫パットとほぼ同じ境遇の男性等々、 十人十色だと思います。
私自身は2人の子供の母親ですが、 誘拐犯呼ばわりされた上に、突然息子を奪われるジョージに 同情ぜずにはいられませんでした。 同じ母親だからこそ、 「自分だったらどうなるだろう」と考えたときに、 同情を通り越して、 むしろ冷徹に見てしまうこともあるのだろうと、 自分でも驚いてしまったのですが、 夫に八つ当たりするベスに、 嫌悪感すら覚える一幕もありました。 自分がベスと同じ境遇に立たされたら、 やっぱり泣き狂い、当たり散らすことは目に見えています。 一種の近親憎悪もあるのでしょうか……。
……と、ここで終わってもいいのですが、 16歳になったヴィンセントを演じたジョナサン・ジャクソンが 繊細な美青年であることや (IMDbの写真ばバカっぽくて嫌だ…) FBI捜査官を演じたウーピー・ゴールドバーグの シリアスな中にもユーモアをにじませた演技に ホッとさせられたこともつけ加えましょう。
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