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1871年7月10日、作家のマルセル・プルーストが生まれました。 あの超長いことで有名な『失われた時を求めて』を書いた人ですが、 「長い/タイトルが有名」な文学作品というのは、 よほどの読書家でもない限り、 大抵の人がまともに読んでいないというのが相場です…… などという言い訳をするまでもなく、私は当然読んでおりません。
が、第一編『スワン家の方へ』の中の余りにも有名なくだり、 「紅茶に浸したマドレーヌ」のことは、辛うじて知っていました。 味覚と結びつく記憶について、鮮やかに表現していますが、 その味覚をもしも失ってしまったら?(それも料理人が!) ……そんな映画がありましたので、御紹介します。
恋人たちの食卓 飲食男女 Eat Drink Man Woman 1994年台湾※ アン・リー監督 ※この呼称についてはデリケートな問題ですが、とりあえずこちらにしまし た
近年は、『グリーン・ディスティニー』の大仕事はともかくとして、 なぜかアメリカでの活躍が多いアン・リー作品です。 作中、名料理人を演じるラン・シャンは、 1991年『推手(すいしゅ)』1993年『ウェディング・バンケット』 と、 同監督の映画で、それぞれに味のある父親役を演じていたため、 本作とあわせて「父親三部作」などと言われることもあるようです。
さて、今度の“お父さん”チュは、ホテルのレストランの名コックで、 男手1つで3人の美しい娘を立派に育ててきました。 長女ジェン(ヤン・クイメイ)は、お固く見られがちな高校教師ですが、 人並みに、すてきな男性との出会いを熱望しています。 次女チェン(ウー・チェンリン)は、航空会社のキャリアOLで、 そこそこうまくいっている恋人がいました。 三女ニン(ヤン・ユーウェン)は、 ハンバーガーショップでバイトをする女子大生で、 しょっちゅう彼女にデートをすっぽかされている男の子に 同情するうちに、惹かれていきます。
チュは、自慢の料理を毎晩日曜日、家族のためにつくり、 豪勢な晩餐をするのを習慣としていましたが、 実は、もう子供ではない三姉妹は、この習わしにうんざりしていました。 それぞれ、もっと大事なものがある年頃です。
チュの悩みは、つかみにくくなった娘たちの気持ちばかりではありません。 実は、料理人でありながら、味覚障碍になっていたのです。 長年の勘で何とか料理をつくり、 味見は信頼できる長年の仕事仲間に任せていました。
恋人=恋する人、という意味ならば、なかなかいい邦題だと思いますが、 恋人=カップル(の片割れ)と考えると、ちょっと見当違いに響きます。 ちなみに、恋するのは何も三姉妹ばかりではなく、 隅に置けないことに、チュ父さんも「恋する人」の1人です(相手は内緒)。
食の喜びと悲しみ、出会いと別れをユーモアたっぷりに、 そして繊細に描いた好編ですので、ぜひともお試しくださいませ。
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