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2002年06月14日(金) ゴーストワールド

今日6月14日は「日記の日」です。
(一部サイトでは、12日となっているかもしれません)
1942年6月12日、13歳の誕生祝いとして日記をもらったアンネ・フランクが、
その2日後の14日から日記をつけ始めたことに由来します。

「……日記」と名のつく映画は幾つもありますし、
そもそも『アンネの日記』も映画化はされています。
が、罰当たりなことに、それを見ていない私は、
最近見たばかりで、日常生活用日記にも取り上げたものを
改めて御紹介することにしました。

ゴーストワールド Ghost World
2001年アメリカ テリー・ズウィコフ監督


アメリカではティーンの女の子のバイブル的なコミックを
映画化したものだとか。(ダニエル・クロウズ作)

奇抜なファッション(でもないんですが、本当は)にぶすっとした表情、
言うことも一々憎たらしいイーニド(トーラ・バーチ)と
発言は過激だけれど、オシャレは意外とコンサバティブで、
金髪の普通にかわいいレベッカ(スカーレット・ヨハンソン)は、
高校を卒業したら、一緒に暮らそうと約束するような
仲良し同士でした。

が、イーニドは、美術の単位が足りず、補習を受けなければ
卒業が認められません。

くさくさして、なんかおもしろいことないかー……と、
2人が目をつけたのは、新聞の恋人募集欄でした。
それを出したうちの1人、中年男シーモア(スティーブ・ブシェミ)を、
偶然見つけた、コンセプトの甘いダイナーに呼び出し、
待ちぼうけを食わせて、それを遠巻きから眺めるという
実に悪趣味なものでした。
(それも、コンビニのなじみの従業員ジョシュ(ブラッド・レンフロー)を
巻き込んだりして、迷惑この上ない!)

「女性」が来ないとわかり、キレ気味の状態で店を出たシーモアを
2人は興味本位でつけ、アパートをつきとめます。
数日後、アパートのガレージセールでマニアックなレコードを
売っているシーモアに話しかけ、
ただキモイおっさんだと思うレベッカとは対照的に、
イーニドは、「あのイケてないところがいい」と、
シーモアに興味を持つようになります。

ところで、美術と補習では、もともとマンガを描くのが得意な
イーニドの才能に講師が気づき、奨学金の口を紹介されたりもします。

レベッカは、勤め始めたお店の仲間と遊ぶようになり、
何となくイーニドとはそりが合わなくなってきました。

そんな毎日の中、ひょんなことからシーモアとイーニドはベッドをともにし、
それまで、自分の恋人には若過ぎると思っていたイーニドを、
シーモアがたまらなくいとおしいと思うようになりますが……。

イーニドたちが感じるような、正体不明のいらつきを、
若い頃には、誰もが覚えるかもしれません。
が、「その気持ち、よくわかるわー」などと言おうものなら、
たちまちイーニドに「わかったような顔しないでよね…」と
鼻で笑われてしまいそうな気がします。
だぁれも理解はしてくれないけれど、
理解されないことよりも、
本当は理解していないくせに判ったような顔する奴の方が、
彼女には「ムカつく」存在なのではないかと思います。

だからこそ、大人なのに自信なさげにおどおどしているシーモアを、
イーニドは好ましいと思ったのではないでしょうか。
「イケてないオタク中年」の一言で片づけるには、
ブシェミ演じるシーモアは、魅力的過ぎる「ダメ大人」でした。

いわゆるオシャレな映画としてとらえられ、
受け入れられる面もありますが、
それだけでなく、デリケートな部分を大切にして撮られている、
なかなかどうしての傑作だと思います。


ユリノキマリ |MAILHomePage