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2002年06月13日(木) |
ペイ・フォワード 可能の王国 |
6月13日は、「小さな親切の日」だそうです。 あらまあ。この日のためにあるような映画があるではないですか。
ペイ・フォワード 可能の王国 Pay It Foward 2000年アメリカ ミミ・レダー監督
ケヴィン・スペイシー、ヘレン・ハントと、2人のオスカーホルダーに、 当代きっての名子役スター、ヘイリー・ジョエル・オスメントが共演で、 成功が約束された映画…のはずでした。 ところが、ふたをあけると悪評ふんぷんで、 オスカーノミネートも完全無視と来たもんです。 私も、1週間レンタルになるまでDVDを借りなかったのですが、 漏れ聞こえてきた悪評のおかげで、過剰な期待をせずに済み、 逆に、非常に堪能することができました。 言われるほど悪い映画ではないというのが偽らざる感想です。
親に虐待されて負った顔の火傷が、 まるでトラウマがそのまま表出されているみたいに見える 中学校教師シモネット(K.スペイシー)は、 頭がよく礼儀正しいものの、人と 深く関わることを怖がっています。
彼が生徒たちに課題として出したのは、 「世の中をよくする方法を考えよ」というものですが、 それに対して、生徒の1人トレバー(H.J.オスメント)は、 自分が誰か3人の人間に対して無償の親切を施す→ 親切にされた人間が、またほかの3人に親切にする→ という方法で、善意の輪を広げていくという、 いわば親切のねずみ講作戦でした。 (原題は、「(親切の)先送り」)
が、何となくできそうな気がする親切運動は、 後々の結果を見ると、成功しているとは言えませんでした。 ヤク中のホームレスの青年(ジム・カヴィーセル)を助けたり、 生活に疲れ切った母アーリーン(H.ハント)に ボーイフレンドをつくろうと頑張ってみても、 結局は余計なお世話だったかも……になってしまうのです。 殊に、アーリーンとシモネットを引き合わせ、 うまくいったかに見えたカップリングが、 出ていったきりだった父(ジョン・ボンジョヴィ)のせいで 引き裂かれたときは、関係者全員の心を傷つけてしまいます。
けれども、トレバーが考えた方法は、 実は彼のわからないところで意外なほどの広がりを見せていました。 その恩恵にあずかった1人、 記者クリス(ジェイ・モー)が発端を探っていき、 ついにトレバーを捜し当てます。 照れながらも、テレビカメラの前で 一生懸命に自分の思いを語るトレバーでしたが、 まさにその日、予想だにしなかった悲劇が訪れます。
シモネットとの初めての本格的なデートに遅れそうなアーリーンに、 「先生が、遅刻するのは相手を尊敬していないからだって言ってた」 とトレバーが吹き込んだために、 やっと約束の場所に着いて開口一番、シモネットに対して 「尊敬してるのよ!」と言い訳するシーンが、 たまらなく好きです。 厚化粧で、がさつで、深酒もするアーリーンですが、 確実に「愛すべき女性である」ということが、 この1シーンで語られている気がしました。
親切とは、善意とは…というテーマそのものから あえて目線を外して見た方が、 人の心の強靱さと脆さについて考えさせられ、 より輪郭がはっきりする気がします。
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