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2002年05月30日(木) 忘れられた子供たち〜スカベンジャー〜

本日5月30日は、語呂合わせで「ゴミゼロの日」ですが、
ちょっと違ったアプローチで、こんな作品はどうでしょう。

忘れられた子供たち〜スカベンジャー〜
1995年日本 四ノ宮浩監督


アジア最大のスラム街とも言われる
フィリピン・マニラのゴミ捨て場、スモーキーマウンテンを舞台に、
6年にわたって撮影された記録映画です。

こちらで御紹介したはいいものの、
実は、ビデオショップで借りて…という感じで
気楽に見られるタイプの映画ではありません。
けれども、機会があれば、ぜひとも見ていただきたいと思います。

スカベンジャーとは、ゴミの山から再生可能なゴミをピックアップし、
それを売ったお金でその日暮らしをする人々のこと。
日本人の感覚からすると、「これが売れるのか?」と思うような
汚れたビニールシートすら、彼らには大事な飯の種です。
それでも、満足に食べていけるわけではなく、
子供でも容赦なくゴミ集めをさせられる現実があります。
きょうこの作品を取り上げたのは、「ゴミゼロの日」に因んでですが、
実は、彼らにとっては、ゴミがなくなるということは、
死にもつながってしまうことなのでした。

たまたま、四ノ宮監督自身が話す撮影秘話などを
聞く機会があったのですが、
ゴミ溜めの悪臭は、シャワーを浴びても3日は落ちないすさまじいもので、
病気になるスタッフもいました。
まさに地獄絵図で、こんなところ2度と来るかとまで思うのですが、
いざ離れると、また行きたくなる……のだそうです。
フィリピンの恥部をさらす映像を撮られるこへの反発もあり、
撮影の邪魔をされることもあったといいます。

監督が出会ったある少女の話。
フィリピンといえば、敬虔なカトリック教徒の多い国でもあります。
日曜礼拝に行ったある女の子に、何を祈ったのかを尋ねると、
家族の健康や幸福と、ためらいなく答えるというのです。
「自分はいつも、金や名声のために映画を撮りたい、
というようなことを考えていたのに」
と、四ノ宮監督はおっしゃるのですが、
少なくともこの映画は、金や名声のために撮られたとは
とても思えない作品でした。

小ぎれいな服を着て、空調のいい劇場やホールでこの映画を見て、
帰りにおいしいものを食べて帰ったのでは、
それはただの物見高い悪趣味だと言われそうですが、
訴えてくるものに耳を貸す、目を向ける、
まずはその姿勢が大切なのではないかと思います。

最も印象に残ったのは、食うや食わずの母親が、
幼い子供のために食べ物を何とか調達し、差し出すときに、
豆料理を一口ぱくっと自分の口に入れるシーンでした。
彼女の「食事」は、その一口で終わりだったのでしょう。
何かを意図して撮られたわけではなさそうなので、
かえって「刻まれる」ものがありました。

なお、こちらは私は見ていないのですが、
2001年、同じく四ノ宮監督作品で、続編的な作品
『神の子たち』も製作されました。


ユリノキマリ |MAILHomePage