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2002年05月29日(水) |
犬と女と刑(シン)老人 |
1966年5月29日、 中国・清華附属中学校で初の紅衛兵が結成されました。 紅衛兵とは、御存じのとおり、 毛沢東に賛同し、権威を否定した革命軍のような青少年の組織で、 あの悪名高き?文化大革命の立役者とも言える層です。
そして、文化大革命という一大歴史的事件は、 皮肉なことに、傑作映画の数々を生み出してもしまいました。
余談ですが、最近ではハリウッド資本の 『キリング・・ミー・ソフトリー』を監督した陳凱歌(チェン・カイコー)も、 当時は紅衛兵の一員で、「私の紅衛兵時代」なる自伝も出しています。
犬と女と刑(シン)老人 老人与狗 An Old Man and His Dog, (香港公開時の英語タイトル) 1993年中国 謝晋(シェ・チン)監督
1972年、中国・寧夏の小さな村に、 愛犬と寂しく暮らす刑(シン)という初老の男がいました。 ある日、犬が激しく吠えるので、外に出てみると、 みすぼらしい身形の女が、物乞いに来ていました。
刑の暮らす村は比較的豊作に恵まれたものの、 近隣の村では食糧が不足しているという話は伝わっていたので、 物乞いもやむを得ないことだろうと女を憐れに思い、 芋とうどんを与えました。 刑があれこれ尋ねると、名前は答えず「女と呼んでくれ」と言います。 女には、家に帰れば小さな子供と舅姑がいるが、夫はおらず、 口減らしのために、自分だけが物乞いをしていました。
好人物でありながら、嫁の来手がなかった刑のところに、 若い(30代?)の女性がいるというので、 村人たちは、からかいつつも、女を村の人間として受け入れました。 いつしか刑と女は結婚します。 刑にとっては、口数は少ないものの心優しい女の存在がいとおしく、 夢見心地でおりました。 刑の犬もまたわかるのか、女に懐いていました。
女は実は、 文化大革命下では黒五類(否定すべきもの)の1つとされていた 富農階級の出だと言います。 富農の者は、財産を没収された上に、物乞いも禁止されていました。 といっても、「富農」のレッテルを張られているだけで、 女は、富農らしいそれ相応の暮らしなどしたことがありません。 「本当に富農ならば、物乞いの必要もなかろうに!」と、 社会のありように腹を立て、ますます女をいとおしく思う刑。
女はある日、一通の手紙を受け取り、刑の前から忽然と姿を消しました。 里で何かあったのでしょうが、確かめるすべもありません。 そして、女を失って嘆く刑の身の上に、 追い打ちをかけるような不幸な出来事が……。
余りにもあっけない終わり方に、 不満を持たれる方もいらっしゃるかもしれませんが、 文化大革命の意義は一体何だったのか? 静かな怒りが伝わってくる作品でした。
因みに……黒五類と呼ばれる特権階級の対局にあるのが 紅五類と呼ばれるもので、貧しい農民や革命要員を指しました。 「紅」は、この場合は革命の象徴ですが、 そもそもの中国語では、めでたい、順調、人気があるなど、 好ましい意味を持っているようですね。
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