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2001年12月27日(木) グレート・ブルー

先日のジャック・マイヨールの自殺は、ショッキングでしたね。
追悼というのも安っぽいのですが、こちらの映画をどうぞ。

グレート・ブルー The Big Blue
1988年フランス リュック・ベッソン監督


「おいおい…『グラン・ブルー Le Grand Bleu』の間違いでしょ」
とおっしゃる方もいらっしゃるかと思いますが、
実は私、いわゆる『グラン・ブルー』(完全版)は見ておりません。
だものですから、私が見たものは、
せりふは英語、もちろんカットもされていたわけですが、
イルカ顔の美女ロザナ・アークェットと、
男人魚(マーマン)のようなジャン・マルク・バールと、
後にガソリン会社のCMにパロディーされた(←多分)ジャン・レノと、
青い海と、山盛りのパスタと、辺境と言いたいような南米の地と、
「感動までできてしまう」リゾート映画として、
いつまでも印象に残っています。

J.M.バールが演じたフリーダイバー、ジャックのモデルが
ジャック・マイヨールだったのは、余りにも有名な話ですが、
ジャックを子供の頃からライバル視していたエンゾ(ジャン・レノ)の
モデルは、今も御健在のダイバー、エンツォ・マイオルカだそうです。
(何年か前、NHKのネイチャー系の番組で見て驚きました)
もっとも、映画でのエンゾの人物像や母親の描写などに異議を唱え、
裁判沙汰になったりして、マイオルカ氏とこの映画との関係は、
良好とは言えないようですが…
(というか、平たく言うと、裁判起こすほど嫌っていると…)

この映画は、ビデオが出てからじわじわと人気が出て、
今やある種のカルトムービーですらありますが、
一番最初の英語版が公開当時は非常に地味なものでした。

ちょうどシュワルツェネガーのポリス・アクション『レッド・ブル』が
同時期に公開され、そこそこヒットしていたせいもあり、
『レッド・ブル』と『グレート・ブルー』を聞き間違えられた、
みたいな話は結構あったようです。
(私自身、友人と電話で話していて、そんなことがありました)

決してディレクターズ・カットでなかったことだけが
原因ではないと思います。
公開され、ビデオ化されてしばらくして、
いわゆるバブルがはじけ、景気がしぼんできたことと、
因果関係までを求める気はありませんが、
無関係ではない気がします。

イケイケムードだったあの時代には、
ちょっとトロくさい映画に思えたものが、
実は非常に癒しのための要素をはらんでいることが知れ渡り、
目にしみる青の世界に浸りきり、
人間として生きることを拒絶しているようなジャックにも、
共感できるようなできないような…
そんな時代の気分が、この映画を愛すべきものにした気がします。

未見の方、済みません。ストーリーにいっこも触れていませんでした。
保険会社のOLが、調査に訪れた南米でダイバーに一目惚れし、
ついでにNYでの世知辛い生き方に飽き飽きしていたもので、
ダイバーの彼をシチリアまで追っかけていって結婚、妊娠。
でも彼は、体は人間でも、どうも中身は人間ではないような…
そんなこんなが織りなす、切ない物語です。
冬に見るには、ちょっと涼しいかもしれません。


ユリノキマリ |MAILHomePage