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2001年12月08日(土) |
リヴァプールから手紙 |
1980年12月8日、ジョン・レノンが ダコタハウスの前で凶弾に倒れました。 そんなことから今日をレノンズ・デイといったりもするそうです。
個人的には、当時12歳で、洋楽を意識して聞くことのなかった私には、 歴史的事実の1つでしかない部分も正直言ってあるのですが、 その後、「ビートルズから影響を受けた人々」の音楽を聞くようになり、 (アーチスト名を挙げると、枚挙にいとまがありませんが) したがって、リヴァプールという地名には、やはりロマンを感じます。
リヴァプールから手紙 Letter to Brezhnev 1985年イギリス クリス・バーナード監督
私が借りたビデオショップでは、 伝票に『リヴァプールから“の”手紙』と記されていました。 が、不自然ですわりの悪い感じは否めないものの、 『リヴァプールから手紙』が正解です。
原題はごらんのとおり「ブレジネフへの手紙」です。 そのまんま、ブレジネフに手紙を書く女性が登場するのですが、 その手紙の内容が大反響を呼ぶというのが、 ともすればよくある運命任せの恋物語になっていたであろう この映画に、メリハリをつけました。
冷戦時代。 イギリス北部の町リヴァプールに、 一隻のロシアの船が入港してきました。 「リヴァプールだ!ビートルズだ!」と、 希望に顔を輝かせるロシアの船乗りさんの明るい声で、 映画が始まります。
夜のリヴァプールの街。 失業中でうぶな娘エレーンは、 薄給に文句を言いつつ元気に働くちゃっかり者のテレーザと 遊び歩いていましたが、 あるバーで、自分を見つめる強い視線を感じます。 停泊中のロシア船から一時的に降りてくつろぐ ピーターという水夫でした。 ピーターはセルゲイという大男と一緒でしたが、 セルゲイはテレーザと意気投合し、 エレーンも、ためらいながらもピーターの繊細さに惹かれ、 一夜を共にします(でも、肉体関係はありませんが)。
ピーターとエレーンは、 別れ際に結婚の約束をするほどに惹かれ合いますが、 帰国後のピーターはソ連体制下で自由に国を出ることもできず、 手紙すら差し止められていました。 彼を思って落ち込むエレーンを慰めるつもりで、 テレーザは(半分冗談で)ブレジネフに手紙を書くことを提案しますが、 エレーンがそれを真に受けて書いた手紙に対し、 返事ばかりかロシアまでの航空券も送られたことで、 ちょっとした騒ぎになりました。 「愛するピーターに会える」と、ロシア行きを決意するエレーンに、 外務省の役人は、ピーターは実は結婚していると告げ、 ソ連行きを断念させようとしますが…
出演者のうち、比較的メジャーな人といえば、 セルゲイ役のアルフレッド・モリーナくらいのもので (近作では『ショコラ』にも出演) あとは、イギリス労働者階級映画の常として、 みーんな「その辺にいそうな人」に見えます。 エレーンも、デビュー当時のデミー・ムーアにちょっと似た、 やぼったいけれどかわいい雰囲気の女優さんが演じていて、 ピーターというすばらしい男性に出会うまで、 ソ連という国を偏向報道でしか知らず、 イデオロギーなど考えたこともない女性を好演していました。
世相は色濃く反映されていますが、 ごく普通の恋愛映画として見た方が、 より内在する問題の深さが伝わる気がしました。
この映画とは直接の関係はないのですが、 この年の11月、ミュージシャンのスティングが、 “Russians”という曲を発表しました。 ぶっちゃけて言えば、 「ロシア人も同じ人間だ」ということを訴えていたのですが、 あえてそう歌わなければならないような不幸な状況があったことが、 残念でなりません。 ちなみに、この映画がつくられた1985年は、 “ペレストロイカ(再構築)”や“グラスノスチ(情報公開)”で 西側諸国からの支持さえ得たゴルバチョフが 書記長に就任した年でもあります(3月)。
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