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2001年11月09日(金) グッドモーニング、ベトナム 

向こう何日かの過去の出来事や映画人のバースデー、忌日などを
当たってはみたのですが、どうもピンと来るものがありません。
そこで、昨日の『ハドソン河のモスコー』に主演していた
ロビン・ウィリアムズの初ヒットともいえる、次の作品を。

グッドモーニング、ベトナム
Good Morning, Vietnam

1987年アメリカ バリー・レビンスン監督


それまで『ナチュラル』『ダイナー』などの、
レトロでしんみりした感じの映画を撮り続けてきたB.レビンスンが、
ええーっと思うような題材に挑んだ作品としても記憶されます。

ベトナム戦時下に実在したというDJエイドリアン・クロンナウワーを、
(かなり大げさに)R.ウィリアムズが怪演していました。
この映画の魅力は、彼のキャラクターに負うところが大きいのですが、
先日の『パンチライン』同様、
「英語で物を考えることができない」日本人にとっては、
彼や、彼のぶっとんだしゃべりと
生きのいいロックに魅せられた兵隊たち、
彼に卑語・俗語を教えられる
英語教室のベトナム人たちとの交流の方が、
どちらかというと楽しめるかと思います。
そもそも彼が英会話教室で教えるようになるのも、
あるベトナム人美女に一目惚れしたことがきっかけですが、
そこから芽生えた美女の兄との友情が、
この映画では悲劇にもつながるのですが…

こういう映画の場合、吹替えが大変だろうなと思っていました。
果たして、ふたを開けたら安原義人さんが担当なさっていて、
正直「?」という心境になりました。
この人、どちらかというと気障な二枚目声で、
例えばミッキー・ロークなんかをよくやっていらっしゃいますが、
台詞回し自体はお上手なのに…全然合っていないんですよね。
この映画がもしあと10年遅くつくられていたら、
絶対ロビン担当は山寺宏一さんだったでしょう。
(江原正士さんも捨て難いけれど)

脇役も充実していましたねえ。
アメリカからやってきた彼を出迎えるのガーリックという男が、
フォレスト・ウィティカー。
「主人公の頼れる親友役」が似合います。
(『フェノミナン』での彼もこの線?)
自分ではイケてると思い込んでいるDJホーク役が、
実は私の密かなひいき、ブルーノ・カービィです。
『恋人達の予感』と『シティー・スリッカーズ』では、
つき合いやすそうないい人でしたが
『スリーパーズ』での主人公の父親、
『フェイク』のチンピラヤクザなど、
見るたびに印象が違うのには驚かされます。
頭のトロいホークをいいように懐柔する軍曹役が、
今は亡きJ.T.ウォルシュでした。
私が知る限り「いいひと」を演じたことがない、
いつも悪役・憎まれ役でしたが、その独特の味わいに、
ファンも多い人だったようですね。

作中で皮肉に使われる
ルイ・アームストロングの「この素晴らしき世界」も聞き物です。

『プラトーン』『ハンバーガー・ヒル』『フルメタル・ジャケット』と、
団子状態でベトナムの(リアルっぽい)戦争を描いた映画が
同時期に多数つくられ、公開されていました。
この『グッド…』には、そういう「リアルな戦争」の直接表現は
ほとんど登場しないのですが、
それでも、あの戦争がどんな意味を持っていたのか、
考えさせるだけのものはあったと思います。
……とか考えずに、とにかく見てわらってみてくださいませ。

ロビンは、この映画でオスカー主演男優賞にノミネートされました。
でも、結局競り勝ったのが
『ウォール街』のマイケル・ダグラスだったこともあり、
ノミネートをされたことを褒めるよりも、
「どうして彼が獲れなかったの!?」ということに、
未だに不服申し立てたくなる好演でした。
(『黒い瞳』のマルチェロ・マストロヤンニもよかったけれど)


ユリノキマリ |MAILHomePage