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2001年10月01日(月) |
アパートの鍵貸します |
新聞の広告で見ましたが、 今日は「コーヒーの日」だそうですね。 例えば、コーヒーショップが重要な舞台になる映画は多いのですが、 (『スモーク』『ジョー・ブラックをよろしく』 『めぐり逢えたら』『逢引き』…) 一番最初に頭に浮かんでしまったのは、この映画でした。
アパートの鍵貸します The Apartment 1960年アメリカ ビリー・ワイルダー監督
この映画を取り上げていなかったのは自分でも意外だったのですが、 大好きで何度も見ている映画ということもあり、 紹介以外で何度も名前を挙げていたような気がします。
たまたま友人の着替えのために部屋を貸したことがきっかけで、 自分の部屋を会社の重役連に、 浮気相手との密会場所として提供して、 出世の足掛かりにしようとしている 保険会社勤めのバクスター(ジャック・レモン)が主人公です。
彼は、エレベーターガールのフラン(シャーリー・マクレーン)に 思いを寄せていましたが、 彼女もまた、そうした重役連の1人と不倫の関係にあり、 一方では、エレベーターの中で唯一帽子を取る男・バクスターの 礼儀正しい態度に、好感を持ってもいました。
バクスターがフランと親密になるきっかけは、 皮肉にも、彼女が不倫相手とバクスターの部屋を利用したことでした。 不倫相手の秘書の悪意ある「忠言」から、 彼との仲をはかなんだ彼女が、 失意のままバクスターの部屋で「眠って」いたためでした。
さて、ここでコーヒーが登場するのですが、 そう感じのいい使い方ではない、まさにほろ苦さの漂うシーンでした。 それは…「ごらんになった方だけがわかるのでございます」。
ところで、バクスターのアパートの隣家には、 ドイツ人の医者が住んでいますが、 連日連夜、彼の部屋から男女の睦言が漏れ聞こえるのと、 部屋の利用者が飲んだ酒の空きビンのおびただしい数とで誤解し、 バクスターをとんでもない遊び人だと思っていました。 そして、「もっと人間らしくなれ」という趣旨の助言をします。 そこのところのタンゴにドイツ語が入っているのですが、 語学にもとんと疎いので、正確にはわかりません… ただ、意義深いシーンでした。
ラストは、ハッピーエンドには違いないのですが、 バクスターとフランの表情が余りにも違うのが印象的です。 余韻の残し方がうまいなあと、感心しきりでした。
軽妙でいながら1つ1つに意味のこもったせりふ、 小道具の使い方(“大道具”であるオフィスビルもグッドですが)も 見ていて飽きさせません。 マクレーンとレモンの名コンビは、 この映画の後、『あなただけ今晩は』でも名共演を果たします。 余談ですが、作家の清水義範さんが、 「テレビ(この場合は地上波民放ですね)で映画を放映するとき、 カットされることが多いが、B.ワイルダーの映画だけは、 むだなシーンなど1つもないので、カットはいかん」 という趣旨のことをエッセーの中でおっしゃっていました。 どんな映画だって、作り手にとってはむだなシーンなんかない、 という意見はこの際抜きにして、 この意見に諸手を挙げて賛成したいと思います。
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