Dailymovie
DiaryINDEXpastwill


2001年09月29日(土) ソフィーの選択

ソフィーの選択Sophie's Choice
1982年アメリカ アラン・J・パクラ監督


主役ソフィーは、この不気味なほどの名演でオスカーも受賞した、
泣く子も黙るメリル・ストリープです。
ケヴィンの役どころは、図書館で行き倒れになった彼女を助ける
ネイサンという男ですが、
分裂症気味のキャラクターを怪演していました。
ソフィーはエミリー・ディキンスンの詩集を借りるために
図書館に行くのですが、原作者のウィリアム・スタイロンが、
ディキンスンの詩に触発されて、この物語を書いたそうです。
(でもって、ピュリツァー賞も受賞しました)

因みに図書館の職員は、
「ディキンスン?ディケンズのことですか?」と、
とんちんかんな対応をします。
ディキンスンは生前は全くの無名だったそうですから(1886年没)、
ただでさえ文学的にはマイナーに属しそうな詩の世界のこと、
この職員を単に勉強不足と責めるべきか否か、ちょっと迷います。
時代背景としては、第二次大戦後の1947年でした。

ソフィーはいわゆるアウシュビッツ収容所の生き残りで、
悲しい過去を背負ってアメリカに渡りますが、
その「悲しい過去」が、「選択」という言葉に集約されています。
ネタバレぎりぎりでいえば、その選択の内容たるや、
女性でなくても、子供を持たなくても、
辛いということだけは十分に想像できるようなたぐいのものでした。

そして、自分を助けてくれたネイサンと一緒に暮らしますが、
アパートの隣家に済むスティンゴという若い男性は、
ソフィーに思いを寄せていて、
優しくロマンチックなムードのネイサンが、
時折人が変わったようにソフィーに暴力を振っていることに
心を痛めていました。
スティンゴを演じていたのは、今や『アリー・マクビール』シリーズの
ジョン“ちびクッキー”ケージでおなじみの、ピーター・マクニコルです。

正直言えば、ソフィーのエピソード、ちょっとホラ話っぽくもあるので、
(それは原作の責任だという説も…)
一度疑問を持ってしまうと、もう入り込めないと思います。
が、メリルの演技に引き込まれてしまうと、
ひたすら「感じ入る」しかないでしょう。
まさに、「観客の選択」を迫られます。
私はどちらかというと、「何だかね…」と思いつつ見ていたクチですが、
やはり肝心なところでは、怒りに震えたい、涙を流したいといった、
ごく人間的な情動に逆らえませんでした。

こういう映画を見ていると、
嫌な言い方ですが、ヒトラーがしたことの1つに、
「数々の映画をつくらせた」ということも挙げたくなります。
この場合は原作がありますが、結局は原作を書かせたのは、
ディキンスンだけでなく、ヒトラーでもあったのでは、とかね。


ユリノキマリ |MAILHomePage