Dailymovie
DiaryINDEX|past|will
実は、今日は非常に個人的な記念日でして、 私の17年来の友人の誕生日なんです。 ことし5月にお母さんになったばかりの彼女は、よくも悪くも、 チェーホフの短編『かわいい女』のイメージにぴったりな人です。 で、チェーホフの短編といえば、こんな映画はどうかと思いまして。
黒い瞳Oci Ciornie 1987年イタリア ニキータ・ミハルコフ監督
先日御紹介した『昨日、今日、明日』で、 情けない男三態を演じていた伊達男M.マストロヤンニが、 この映画でも、「情けない伊達男」を好演し、 アカデミー主演男優賞にノミネートされました。 受賞すれば、非英語映画での初の受賞だったのに、 全く惜しいことです。 (しかも、なぜマイケル・ダグラスに負けるかな!)
恋のときめきとか移ろいやすさとかを、 ユーモラスに繊細に表現した、 温かだけれども苦い、ブラックココアのような映画です。
原作は、チェーホフの『子犬を連れた奥さん』ほか何編かですが、 原作というよりはモチーフ(製作動機)というべきかもしれません。
「逆玉に乗ったのんきなロマーナは、 黒い瞳が美しいアンナと温泉保養地で会い、 苦労人の彼女に恋をしてしまいますが、 彼女のために、今までの人生を捨てられるでしょうか?」 というようなエピソードを、 船の上で、ある男が、ロシア人旅行客に語るというスタイルで、 物語は進んでゆきます。
『ひまわり』では、 イタリアからロシアまで女性に追っかけてこられたマストロヤンニが、 この映画では、女性を追ってロシアへと赴きます。
実は、19歳で初めて見たときは、 「う〜ん、いいんだけどね…」と、 ボロ泣きしておきながら歯切れの悪い評価だったのですが、 加齢とともに「あれはすごくいい作品だったなあ」と、 思い返せるようになりました。 だから、今見ていまいちピンと来ないという方は、 5年、10年してから再び見るのも一興かと思います。 長期戦で臨んでみてください。 そもそもこの手の作品がダメという方は、きっと最初から 「おもしろくない」と断言できると思います。
参考までに、この映画に登場する温泉保養地のシーンは、 フェリーニの『8 1/2』のパロディーという説もあるようで。
|