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1973年8月31日、「西部劇の神様」と言われる ジョン・フォードが亡くなりました。 そこで、氏の監督作で、西部劇とはちょっと趣を異にする、 ちょっと牧歌的な作品を御紹介します。
静かなる男 The Quiet Man 1952年アメリカ ジョン・フォード監督
大ヒット作『E.T』をごらんになった方は多いかと思いますが、 あの映画の中で、E.Tが、テレビで映画を見ているシーンを 覚えていますか? その映画というのが、この『静かなる男』です。 ちょうどその頃、学校の授業でカエルの解剖をしている最中、 何を思ったか、主人公エリオット少年がカエルを逃がし、 パニックになった教室で、どさくさまぎれに 好きな女の子にキスをするシーンが、 『静かなる男』のキスシーンと同時進行で見られました。 ベタといえばベタですが、 今思えばスピルバーグらしい使い方でした。
『静かなる男』とは、J.フォード映画の常連である ジョン・ウェインが扮する、元ボクサーの男ショーンです。 試合中に相手を撲殺してしまったのにショックを受け、 引退して故郷のアイルランドに帰り、 恋仲になった女性メアリー・ケイトと結婚するに当たって、 その女性の兄(ショーンとは犬猿の仲)から 結婚持参金をかち取るため (持参金がないことを恥じるメアリー・ケイトのため)、 一度は封印したパンチを繰り出して決闘……
こう書いてしまうと、本当にダサダサというか、ベタベタというか、 ああ、ありがちだなあと響いてしまうのが、残念でなりません。 しかし、名画というのはそうしたものかもしれません。 感動は一言では語れないけれど、 プロットはごくごくオーソドックスで、 一流の調理人の手で、極上に仕立てられるというわけです。
アメリカはアイルランド移民とその末裔の多い国と聞きます。 ジョン・ウェインも、きっとその1人でしょう。 (ケネディも、モンローも、グレース・ケリーも…) アメリカ資本でありながら、 アイルランド映画と言い切りたいほど、 あの国の薫りがします(行ったことないけど)。
実は私、ジョン・フォードの映画って、 これと『タバコ・ロード』しか見てません。 つまり、いわゆる正統派の西部劇は1本も見ていないのです。 それでも2本の映画から、 氏の抜群のユーモアセンスを感じました。
ところで、『タバコ・ロード』は、 農夫の救いようのない貧しい生活を描いていますが、 全く深刻な映画ではありません。 それにもかかわらず、 日本では製作から公開まで40年ほどあいた理由が、 その誤解を与えかねない貧しさの描写だったそうです。 もしビデオ店で見つけたら、 これもレンタル候補に入れてみてください。 (『静かなる男』は、 アカデミー賞コーナーにあることでしょう。 監督賞と撮影賞を受賞したそうです)
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