Dailymovie
DiaryINDEXpastwill


2001年06月18日(月) スウィート・ヒアアフター

スウィート・ヒアアフター The Sweet Hereafter
1997年カナダ アトム・エゴヤン監督


後味が悪いというよりは、「私ならこうするなあ」と、
自分としては珍しく発展的なことを考えてしまった映画でした。
『ハーメルンの笛吹男』がモチーフとなっているようですが、
だとすれば、後味悪くて同然とはいえ、
舞台が雪深い小さな町という設定が、
一応雪国の端くれに住む者としては、何とも切ないのです。

22人の子供を巻き込んだスクールバスの事故に絡み、
落ち目の初老弁護士(イアン・ホルム)が
集団訴訟を焚きつけようと田舎町にやってくるところから、
物語は始まります。
ひんやりとしたトーンの、サスペンスタッチの人間ドラマで、
映像の美しさはピカイチでした。

これも、どう書いてもネタバレになりそうだし、
多くは語りませんが、
「私ならこうする」と思ったのは、
何も知らないイナカ者を適当に言いくるめて……
という態度が見え隠れする弁護士に、
逆に遺族(親たち)がギャフンと言わせるような設定だったら、
どんなに痛快だったろう……と思ったのでした。
でも、それでは映画のテーマというか、流れそのものが変わって、
全く別物の映画になっていたのですよね。
(結末が変わっても影響が余りない映画ってのも結構ありますが)

雪に閉ざされたような町の事件を描いたものとしては、
『ファーゴ』なんかも絶賛されましたが、
私はこれがいいと思えませんでした。
上手につくってあるし、皮肉な展開は嫌いじゃないのに、
なーんかむかむかするのです。
どうも、あの雪景色が悪かったみたいです。

雪景色は出て来なかったものの、
『真夜中のカーボーイ』で、
ジョン・ヴォイトが元々住んでいた田舎町も、
何となく寒そうでした。
けばけばしいオバチャンを相手にしてお金を稼ごうとしたら、
逆に金取られたり、
映画館(のトイレ)でホモの人に迫られたりという
具体的な「都会はこえーとこだ」という描写よりも、
何度も何度もほぼ説明なしに繰り返される、
ヴォイトとの体の関係にのめり込む、
恋人だった田舎娘の描写の方が、
何百倍も怖かったです(多分、皆さんそうだと思うけれど)。
あれなんかも、寒村の業の深さみたいなものを感じる、
そういう怖さだった気がするのですが。

私は東北出身とはいえ、
いわゆる絵に描いたような地方都市で生まれ育ったため、
本当の意味での「田舎」というものを、
正確には把握していないかもしれません。
雪国といっても、さすがに屋根が抜ける心配をするほどの
降雪には遭ったことがないし。
(ライフラインが2〜3日途絶された経験はありますが)
それでいて、寒い田舎の物語を見るのって、
近親憎悪のような苦痛を感じます。
特に、人間像がリアルに描かれていると、もっと辛い……。
雪が大道具として使われていると、もーだめってところです。
だものですから、未だに『シンプル・プラン』を見損なっています。
(同じ寒そうな映画でも、『心の地図』くらい幻想的だと、
むしろ夏に避暑気分で見たい1本になっちゃいますが)

でも、雪に閉ざされた田舎のサスペンスタッチの映画って、
私にとっては「怖いもの見たさ」で見たくなることがある
ジャンルでもあります。


ユリノキマリ |MAILHomePage