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6月17日は第3日曜日ということで、父の日ですね。 そこで、2日連続でアイルランドが舞台の映画ですが、 この作品を。
スナッパー The Snapper 1993年アイルランド スティーブン・フリアーズ監督
この「スナッパー」とは、赤ちゃんの意味だそうです。 ブッカー賞ホルダーでもあり、日本でも人気の作家 ロディ・ドイルの“バリータウン”シ3部作には、 いつでも愛すべきラビット家のお父さん、 ジミー・ラビットが登場しますが、 その2作目「スナッパー」を映画化したのがこの作品です。 (ちなみに1作目は、これまた映画化された『ザ・コミットメンツ』、 3作目は『ヴァン』ですが、こちらの映画化作品は日本未公開です)
ジミー・ラビットを演じているのは、 アメリカ映画などでもしばしば顔を見ることができる コルム・ミーニーでした。 『ケロッグ博士』『コン・エアー』『草原とボタン』などに 出ています。 非常に達者な方ですが、いつも同じに見えてしまうのは、 あの個性的過ぎる顔のせいでしょう。
ラビット家の長女シャロンが、まだ20歳の若さで、 結婚もしていないのに、ある日突然、妊娠を宣言します。
ちょっとダークな話題になりますが、 アイルランドは敬虔なカトリック教徒の国ですから、 当然、妊娠中絶など認められておらず、 13歳の少女がレイプされて妊娠したとき、 「とにかく産め」という意見と、 「外国で処置したら」という意見の 2つに分かれたという事件がありました。 たしか、後者を選んで一応の「解決」を見たと思いますが、 もちろん、本当の意味での解決ではありませんね……。 しかし、敬虔なカトリックの国でも、レイプ犯っているのですね。
閑話休題。 シャロンは、父親のに関して口を割ろうとしません。 特定のボーイフレンドはいないし、別に悩んでいるふうでもなく、 スペインの船乗りと情熱的に愛し合ってデキちゃった〜っと、 ケロリと友人たちに自慢?する始末です。
で、おろおろするのはお父さん初め家族たちです。 娘の体は心配だし、 ふしだらな娘のいる家ということで嫌がらせをされるし、 実は薄々勘づいている「父親」との関係もぎくしゃくします。 酔っぱらって前後不覚になったシャロンが、 勢いで関係を持ってしまった相手は、 ジミーの友人だったのでした……。
ヤケになったシャロンが、 カラオケでマドンナの「パパ,ドント・プリーチ」を熱唱するという、 ベタベタなシーンも登場しました。 (若い皆さんへの解説…… この曲は、マドンナの80年代のヒット曲ですが、 内容が、恋人との間にできた子供を産むために家出をする 若い娘の決意を歌ったもので、 「オヤジ、説教すんな(パパ,ドント・プリーチ)」というわけです)
でも、元来が家族思いのジミーは、 元気な子供を産んでみんなで育てようと、娘を励ましました。
出産当日。そわそわするジミーに対し、 ジミーの妻ベロニカときたら、 既に5人の出産経験のあるアイルランドの母らしく、 「みっともない」とジミーをたしなめる落ち着きぶりです。 この辺は万国共通かもしれませんが、 我が身に置き換えると、ああも落ち着いていられるかどうか。 やっぱりアイルランドの母は強いと思いました。
その他、シャロンがかわいい元気な女の子を出産、 その子にジミーがつけた名前の秘密、 (というほどでもないけれど) 初授乳とジミーの祝杯(当然ギネススタウト)の関係など、 小ネタで笑わせてくれるところも多いので、 ぜひとも見てみてください。 字幕派の方が多いかと思いますが、 吹替え版でジミーを演じていた 青野武さんの独特の調子もなかなかよかったと思います。 (『ちびまる子ちゃん』の2代目おじいちゃん、 『キテレツ大百科』の八百屋のクマハチさん、 『ONE PIECE』の、タカの目のミホークなど) 私、これは字幕と吹替えの両方を見ましたが、 どちらも同じくらいに魅力的でした。
それにしても、かわいい女の子(愛称ジーナ)が生まれたところで、 『ヴァン』の映画版が日本未公開なのは、 やっぱり非常に残念です。 原作を読む限り、完全にジミーが主役といっていい物語ですが、 自分は失業中で小遣いも満足でなく、 図書館で時間をつぶすような毎日なのに、 2歳のかわいい孫ジーナにアイスクリームくらい買ってやりたいと 考える、そんな微笑ましいじいちゃんぶりが見てとれました。
監督が誰かすらわからないほど情報がないのですが、 ジミー役はやっぱりコルム・ミーニーだといいなあと思います。 ビデオだけでもいいから、出るといいのですが……。
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