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ラジオ・フライヤー Radio Flyer 1992年アメリカ リチャード・ドナー監督
本当は水面下に沈んでいたものが浮いてきただけかもしれない、 幼児虐待による殺人事件が相次いで報道され、 やりきれない思いを味わう今日この頃です。
例えばグリム童話『ヘンゼルとグレーテル』は、本によっては 継母に森に捨てられたという表現をしている場合がありますが、 実際、食糧難に困った実の両親が2人を捨てたと考えた方が あの物語の背景となった社会情勢を理解しやすいようで、 今日の虐待も、決してなさぬ仲の親子の間だけではなく、 実の親が手をかけているケースの何と多いこと。 (というか、血のつながりがないというだけで 継子いじめという発想をすること自体が 失礼極まりない話ですが)
この物語の主人公は、2人のかわいい兄弟です。 兄がイライジャー・ウッド、 (『アイス・ストーム』『ディープ・インパクト』など) 弟がジョゼフ・マッゼロウということで、 (『サイモン・バーチ』『フォーエバー・フレンズ』など) 演技ができるだけでなく、美少年度の高さもかなりのものですが、 弟ジョゼフは、体が小さく無抵抗で、 かつ母ロレイン・プロッコ(『グッド・フェローズ』など)の 立場を考えられる知恵があったため、 母の再婚相手から、特にひどい虐待を受けていました。 兄は弟を守ろうと奮闘しますが、子供の力では限界があります。 それでも2人は、宝物である真っ赤なラジオ・フライヤーで、 ゴルフ場に池ポチャしたボールを拾い集めて小遣いを稼いだり、 悪魔払いのために妙な薬を台所でつくってみたり、 決して絶望せず、現状を打破することを考えていました。
Radio Flyerと白抜きのロゴが入った台車は、 日本でも、大きなおもちゃ屋さんや輸入雑貨のお店で 容易に手に入りますし、 我が家にも小さ目のが1つあります。 あれが1つ、それも、できたら小さな子供が乗って遊べるような サイズのものがあるだけで、 いかにもアメリカ映画らしい演出がなされますね。 この映画では、ジョゼフが虐待地獄から抜け出すための 重要なポイントになる、 いわばもう1人の主役となっていました。
虐待のシーンなどは、見ていて辛いものがありますが、 まるっきり絶望的な話ではなく、 良質のファンタジーに仕上がっていました。 あの2人の名子役が本物の「役者」だったからこそ 成り立った作品だと思います。 子役を使う映画をあざといと毛嫌いする方にこそ お試しいただきたい、そんな作品だと思います。
ただ、イライジャー・ウッドが成人してからの役を、 トム・ハンクスが演じていたのは、いかにも無理がありました。 『サイモン・バーチ』で、ジョゼフ・マッゼロウの成人後を、 ジム・キャリーが演じていたのといい勝負です。 どちらもカメオに近いような、ごく短い出演だったので、 まあサービスショットというノリもありましたが。
そこいくと、話は少々逸れますが、 『マイ・フレンド・フォーエバー』で ベッド・ミドラーの少女時代を演じていた メイム・ビアリックはそっくりでした。 (少し古いけれど、シットコム『ブロッサム』の主演でおなじみ) また、近作では、 『僕たちのアナ・バナナ』での、 ベン・スティラー、エドワード・ノートン、ジェナ・エルフマンの、 それぞれの子役が余りにも似ていたので、びっくりしました。 そういう細部で手を抜いていない映画は、 それだけで評価したい気さえします。 (実際私は、どちらの映画も大好きです)
以上、『ラジオ・フライヤー』と、 子役から大人役者への梯子についての一考察……でした。 本当は児童虐待についてもっと書こうかとも思ったのですが、 余りにも辛い話題になってしまい、 また軽々しく書けるような内容でないので、 思い切り横道に逸れてしまい、申し訳ございません。
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