Dailymovie
DiaryINDEXpastwill


2001年06月08日(金) ライフ・イズ・スウィート

ライフ・イズ・スウィート Life is Sweet
1992年イギリス マイク・リー監督


皆さん、98年のイタリア映画
『ライフ・イズ・ビューティフル』ってごらんになりましたか?
今年の初めには、日曜洋画劇場の枠でも放映されましたね。
これをごらんになって、タイトルの皮肉さを
けげんに思った方もいらっしゃるでしょう。
映画公開時のパンフレットによると、ロベルト・ベニーニが、
革命家トロツキーに追っ手がかかり、すわ処刑!という局面でも、
「それでも人生は美しい」という言葉を残したことに感銘を受け、
タイトルとして採用(原題はイタリア語)したそうで、
そんなわけで、単なる皮肉ではなかったようですが、
今日御紹介する映画のタイトルは、
全くの皮肉としかいいようのないものでした。

失業中で、フィッシュ&チップスの移動店舗を
出すことを考えている父、
子供服の店を切り盛りし、家のこともぶつぶつ文句を言いながら
こなしている母、
余り仲のよくない姉妹ナットとニコラという
4人家族が中心になっています。
ナットはレズビアンで、ニコラは摂食障害で、
母はどちらの娘にも不満たらたらでした。

いわゆる美男美女は誰1人として出てきませんし、
大事件も起こらないし、
一応、ある映画紹介文では、
「母ウェンディが、家庭を盛り立てようと健気に奮闘」
していることになっていますが、
私は彼女に少しも共感できませんでした。
元気がいいのはいいけれど、自分の物差しで計れない
娘たちを、あえて「言葉を選んで」傷つけているようにしか
見えなかったからです。
でも、そういう母親ってよくいますよね。
別に鬼母というわけでもないし、
確かに腹立たしいところもある娘たちではあるし。

かなり以前ですが、あるラジオドラマを聞きました。
いわゆるレンタル家族が題材になっていて、
若夫婦がおしゃま盛りの娘を連れ、
老夫婦のもとを訪れるのですが、
どうやら、「久々に息子夫婦が孫を連れてきた」という
疑似体験を期待してのオファーだったようです。
そして、うそ寒くなるような和気あいあいを演じるのですが、
娘役の子供が演技過剰のスタンドプレーに走ったりで、
めちゃくちゃにされてしまい、
そこに、「本物の」息子夫婦が子供を連れてあらわれる、
という展開でした。
本物の息子は、父親と差し向かいで酒を飲んでも会話が弾まず、
「どうしてた?」「別に…」ってなもので、
それでも別に険悪というわけでもなく、
聞いているこちらとしても、
本当の親子ってこんなものだよなあと思うのみでした。

映画におけるリアリティってのは、実に難しいものです。
私は、現実にはあり得ないようなファンタジーや、
ハラハラドキドキの冒険活劇といった映画が得意ではなく、
市井劇のようなものに惹かれる傾向があるのですが、
それも程度問題で、
さすがに、何が言いたいのかわからない、
訴求力がないというか、ひたすらべたっとうっとうしいだけの
生活ドラマはちょっと……です。
この、タイトルとは裏腹の内容の映画は、
名匠(かなあ)マイク・リーの手腕を持っても、
最後まで「う〜ん」と首をねひってしまうような作品でありながら、
結局「何が言いたかったんだろう」と考えてしまうことで、
3年経っても気になって仕方がない作品となってしまいました。

そういう作品ですから、映画にひたすら夢を求めるタイプの方には
絶対にお勧めできないのですが、
自分の中では、「これよりひどいのは見たくない」という、
1つの最低基準として残っていることで、
ある意味価値があります。
冷静に考えたら、同監督の作品でも、
未見の『キャリアガールズ』はともかく、
『秘密と嘘』はあんまり乗れなかった私ですから、
無理からぬことではあったかもしれません。
といって、監督の名前だけで映画を見ると、
痛い目を見たり、食わず嫌いで見ないままだったりという欠点も、
今までの経験から少しはわかっているつもりなのですが。

ブルーといえば、映画の中でナットがニコラに
「このシャツどう?」と、シンプルなブルーのシャツを
見せるシーンがありましたが、
ニコラの答えは、
「ティータオルみたい」でした。
(字幕では「手拭い」になっていたのですが)
以前、通販でアイリッシュリネンのティータオルを集めるのに
凝っていたのですが、
あんなシンプルなのは、ついぞ1枚も来なかったです。
で、これを見た当時の日記には、
「あんなティータオルなら欲しい」と書いていました。
きっと、よっぽど書くことがなかったんでしょうね。


ユリノキマリ |MAILHomePage