木陰の本棚<書庫>
絵本と読み物のあれこれ

2002年03月26日(火) 「氷の海とアザラシのランプ」カールーク号北極探検記

ジャクリーン・ブリッグズ・マーティン・文

ベス・クロムス・絵 

千葉茂樹・訳  BL出版
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1913年に、カナダの北極探検隊をのせた捕鯨船カールーク号が、

北極海の氷の海にとじこめられました。

乗っていたのは、船長・船員・科学者・探検隊・猫・そり犬、

それに8歳のパグナスークと、2歳のマクビーという姉妹をつれた

イヌピアク族の家族とそのお父さんの友人・・・。

このお話は、そのカールーク号に取り残された人々が生還するまでの

ノンフィクションな物語です。


このお話を書いた、ジャクリーン・ブリッグズ・マーティンは

1999年に「雪の写真家ベントレー」( 「雪の季節に」にUPしています。)

という絵本で、コールデコット賞を受賞している作家です。

カールーク号の物語を読み、

ぜひ子どもたちにこの感動を伝えたかったそうです。


そして、絵を描いているベス・クロムスは、イヌイットの装飾美術の

研究をしているそうですが、この絵本でも

「アザラシのランプ」の雰囲気がとてもよく伝わってきます。


そういえば、訳者の千葉茂樹さんは

「エンデュアランス号大漂流」

(エリザベス・コーディー・キメル・著 あすなろ書房)

というノンフィクションも訳しておられます。

こちらは、南極大陸をめざしたシャクルトンという探検家をリーダーとする

奇跡の生還の物語で、この話を読んだときにも、

極寒の厳しい自然の中から生還するドラマに圧倒されましたが、

この「氷の海とアザラシのランプ」では、

視点がイヌピアク族の家族になっていて、

厳しさの中に、この家族が寄り添って生きている暖かさのようなものを

常に感じながら、読みすすむことが出来ました。


そして・・・

巻末に、パグナスークとマクビーが、その後、どのような大人になったのか、

簡単に記載されているのを読んで、静かな感動が胸に広がりました。


娘がパグナスークと同い歳になったら、このお話を読んであげようと思います。






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