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2003年10月30日(木) |
キル・ビル Vol.1 |
うはーバイオレンス炸裂。やってくれたぜタランティーノ!イッちゃってるYO! 腕が飛び、脚が飛び、首が飛び、腑は弾け、噴水のごとく血しぶきがあがる。ヤクザとカンフーとマカロニ・ウエスタンへの執着、こだわりの音楽、ありえなさすぎる展開、暴走したB級テイスト…ああ目眩くタランティーノ世界。最高! これはね、問答無用のオタク映画ですよ。宣伝にのせられてクールでオシャレなエンターテイメント大作を観に来たつもりの方々には本当にご愁傷様でした(笑)。例えば「S.W.A.T」とか「パイレーツ・オブ・カリビアン」と同じような感覚でデートコースに組み込んだりするのはやめたほうがいいです。激しく観る人を選ぶ作品というか、同じオタク映画でも「マトリックス」なんかとは性質がまるで違って、これは予めタランティーノに対する理解がないとちっとも面白くないのね。興行的にもそれほどいかないんじゃないだろうか。いやむしろそれで当然だという気もするが。受け入れられない人の方が多数派だと思うし。
だいたいタランティーノも、6年ぶりの新作!とか、満を持しての復活!とか、発表前にこれだけもてはやされていながら万人ウケしようと下手な色気を出したりせずに、とことん徹底して自分の世界を追求したところがスゲェよな(笑)。オタクの鑑だよ。どの雑誌のインタビュー記事を見ても子供みたいなはしゃぎっぷりで「梶芽衣子は最高にクールだぜ!」とか「見て!見て!このシーンは撮っててマジで興奮したよ!」とか「千葉真一とデヴィッド・キャラダインを僕が演出できるなんて夢みたいだ!」とか相変わらずのマシンガントークを繰り広げてるし、なんか私はこの人のこういうところがすごく好きです。もう大好きだ。その少年のオタク魂をいつまでも失わずにいてほしい。
ストーリーは(今更言うまでもないけど)、結婚式当日に夫とお腹の子供を殺された主人公が、手を下した奴ら一人一人に復讐していくというお話。ほんとにそれだけ。ああ何書いてもネタバレにならない単純な話ってスバラシイ!(笑) 今日は思う存分語れるよ。 で、誰もが指摘してることですが日本刀抱えたまま平気で飛行機に乗ってたり全編に渡ってツッコミ所満載。ここまでやりたい放題だと爽快で気持ちいいです。ルーシー・リューとの対決の舞台である「青葉屋」(漢字は多分これでいいんだよね?)も、障子をスパーン!と開けたら突然しんしんと雪が降り積もる日本庭園が広がっていたりして(二階なのに!)、一体どういう構造だよ!!ってきっと誰もが心の中でツッコミを入れたであろう。おそらく真っ白な雪に赤い血が飛び散る様を撮りたかったんだと思うけど、とにかく終始一貫こんな調子で、前後の辻褄も常識もまるで無視して「これがやりたい!」「これが撮りたい!」という監督の趣味とロマンだけで二時間ずんずん突き進んでいく、そういう映画なわけ。
それにしてもユマやルーシーが喋るあやしい日本語は面白かった。片言なのに加えてヤクザ映画とか時代劇の影響丸出しの古風な言い回しだから、日本人でも聞き取るのに苦労するんだけど。例の「ヤッチマイナ!」で待ってましたとばかりに会場がどよめき、「マダ命ノアル者ハ持ッテ帰リナ、タダシ、落トシタ手足は置イテイケ」とかその辺の長台詞であちこちからクスクス失笑が聞こえ始め、そしていよいよ決戦のシーン、「サッキハ・馬鹿ニシテ・悪カッタ・ネ…。行クヨー!」「来ナ!」に至って有楽町丸の内ピカデリーは壮絶な爆笑の渦に包まれました(笑)。いやほんとに! アメリカ人が話す辿々しい日本語って日本人から見ると独特の面白さがあるわけですが、このあたりアメリカではどうなんですかね?みんな神妙な顔して見てたりするんでしょうか(笑)。なんか「ライジング・サン」のショーン・コネリーを思い出しちゃったよ。あの映画の「フザケルナ!」にも笑った笑った。(また古いたとえですみません) 蛇足ながら付け加えておくと、私は別にありえない日本描写を馬鹿にしてるのではなくて、というのはつまり、タランティーノが目指したのは現実に存在する日本社会を描くことではなく、あくまで彼が心酔した映画の中のイメージとしてのジャパン、ヤクザ映画や時代劇へのオマージュをやってるのね。だから「今時そんな日本語使わねーよ」とか、そういう日本のリアリティに関わるツッコミはこの映画では全て無効、ナンセンスこの上ない的外れな指摘になってしまうと思われます。
あとさ、やっぱタランティーノは音楽がいいよね! 思わずサントラ買っちゃったよ〜。布袋さんの「新・仁義なき戦い」とか超カッコイイし、ウイークエンダー…じゃなかった(年齢限定ネタ)、「アイアンサイド」は懐かしいし。とりあえず今度カラオケ行ったら「修羅の花」(by梶芽衣子)が歌えるくらいの勢いで聴いてます(笑)。そんな感じ。Vol.2が楽しみだ!
****** キル・ビル Vol.1 【KILL BILL: VOL.1】
2003年 アメリカ / 日本公開 2003年 監督:クエンティン・タランティーノ 出演:ユマ・サーマン、ルーシー・リュー、デヴィッド・キャラダイン、 千葉真一、栗山千明、ジュリー・ドレフュス (劇場鑑賞)
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