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2003年03月13日(木) |
「スパイダー」に備えよう!第三弾 原作:パトリック・マグラア「スパイダー」を読む |
しつこくやってる「スパイダー/少年は蜘蛛にキスをする」に備えよう!企画。でも今日で終わり(やっと)。最終回のテーマは“パトリック・マグラアの原作を読んでみよう!”。
| スパイダー〔→bk1〕
パトリック・マグラア 著 / 富永和子 訳
早川epi文庫 2002.9発行
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“SPIDER” by Patrick McGrath,1990 |
これは何というか…「裸のランチ」といい「クラッシュ」といいクローネンバーグさんよくもまあ自分の世界を追求するのに相応しい原作を見つけだすものだなぁとといったところでしょうか。映画化しようなどと普通だったらまず考えないであろうタイプの小説であります。
かつてスパイダーと呼ばれた主人公が、記憶を手繰り寄せて少年時代の母の死に関する出来事を日記に綴っていくというお話。一貫して主人公の一人称形式で語られるんだけど、この語り手は、明らかに精神を病んでいる。知り得ないことを見てきたかのように語ったり時に幻覚が混じったり今と過去とが交錯したりする。一般的なミステリだったらその語りの中に真実を見抜いてゆく醍醐味みたいなのがあったりするのですが、この話はラストまで読んでもそういう風にスッキリさせてはもらえません。ある程度真相解明できるようにはなってるものの、読者をスパイダーの視点に引き込んで翻弄することがメインみたいな、そんな感じ。
映画の方は、クローネンバーグにしては割と過激さ控えめだという話を耳にしました。確かにこのお話自体はそんなに衝撃的ではないかもしれないです。ストーリーそのものよりもむしろ一人の男の錯乱した精神世界をどう映像化して観客に味わわせるかというところがポイントになるはずで、過激じゃなくともこのあたりは十分クローネンバーグっぽいネタになってると言えるでしょう。うわっキモっ!クローネンバーグならこういうの嬉々として再現しそう!と予想したくなるプチ気持ち悪い場面も、まあ、あるにはあるんだけどね。 いずれにせよ原作にとことん忠実にするわけでもないだろうしどう味付けされてるのかは非常に興味深いところです。例えば副題の「少年は蜘蛛にキスをする」というのはこの原作を読んだだけではいまいちピンときませんしね。
ただし美しい男鑑賞及び堪能を生業としているわたくしと致しましては、主演のレイフ・ファインズのことが唯一気がかりであります。この役を演ずるってことは、…ああ、麗しい彼はまったく期待できません…。これはね、「ロード・トゥ・パーディション」のジュード・ロウ、「SLOW BURN」のジェームズ・スペイダー(そんな例誰も知らないっつうの!)など足元にも及ばない汚れ役でありますよ。先日の「レッド・ドラゴン」における殺人鬼役なんか甘い甘い。あの時みたく全裸になって得意げな顔をしてみせたりとかそのまましばらく走り回っちゃったりとかそういうキュートなサービス(違)もおそらくないはずです。ああん残念!実に残念! しかし彼の熱演なくしてこの作品は成り立たず。チャレンジャーレイフ、頑張って下さい。期待してます。
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