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普段邦画に全く興味がない私にしては珍しく、予告編を見た時から非常に気になっていた作品。いやあ期待を裏切らないじゃないですか山田監督さすが巨匠でいらっしゃる! 観に行って正解でした。実に、実に良かったでがんす。あ、方言うつった。
これ一応時代劇ですが、普段時代劇を見慣れてない人(私のように)でも十分楽しめる仕上がりだというところがポイントだと思うのね。舞台は幕末だけど盛り込まれたいろんな要素が現代社会に通じていて、それが平成不況の下で清く正しく頑張っている我々小市民の共感を巧みに誘うわけです。生活の苦しさ、でもその中にあるささやかな幸せ、組織に属することのやるせなさ、不器用な恋愛、などなど。こういうところが山田洋次なんでしょうか。 そしてただしみじみさせるだけじゃなくて見せるところはきちんと見せるというか、例えば決闘のシーンの緊迫した感じなんか非常に良かったです。よくあるような型通りのチャンバラではなく、固唾をのんで見守ってしまう緊張感。音もリアル。
上映時間二時間超えると言われると私はいつも少々うんざりなんだけど(内容の善し悪しにかかわらず)、でもこの映画は途中全然退屈しなかったのでその点も感服致しました。だって歴史に残る大合戦やら世紀の偉人やら描いた大スペクタクルじゃないですよ? 幕末の東北に生きる平侍の姿を追うだけでたっぷり129分飽きさせないというのはそれなりにすごいことではないかと。
真田広之扮する清兵衛は、謙虚で素朴で欲もなく、けれど実は切れ者で腕が立つ、という、ちょっとマスターキートン((c)浦沢直樹)風キャラ。髪もボサボサで服は薄汚れて見た目悲惨なんだけどこういう主人公に反感覚える人って少ないだろうし、ある意味普通の二枚目演ずるよりもオイシイ役どころかもしれないなあと思いました。 でもまあ、「幼い頃から貴女を嫁にするのが私の夢でした」なんて唐突に言い出した時は正直ビックリしましたけど。娘2人も作っておきながら今更何言ってんだオイ!みたいな。しかもあなた最初に再会した時誰だかわかってなかったじゃん!みたいな。いや、いいんですけどね。いいんですよ。真田広之だからいいんです。
宮沢りえも良かったです。あと個人的には田中泯さんの武士っぷりに拍手をおくりたい。井上陽水の曲も良いです。予告編見た時からこの曲頭の中で鳴りっぱなしですよ。井上陽水って何なんでしょうね。新しいんだか懐かしいんだかわかんないリズムとフレーズと歌声でやみくもに人を魅了する。
ただひとつだけ心残りが。実は上映開始時刻に間に合わなくて最初の7,8分を観てないんですよー。良い映画だっただけに実に、実に悔しいでがんす。(<いい加減にしろ) ということでビデオになったら再見決定。
****** たそがれ清兵衛
2001年 日本 監督:山田洋次 出演:真田広之、宮沢りえ、 小林稔侍、大杉漣、田中泯 (劇場鑑賞)
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