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2002年10月28日(月) |
Dolls [ ドールズ ] |
男の裏切りで心を病んでしまった女とそれを知って女の元に戻ってきた男、赤い紐で互いの身体を結んで黙々と放浪を続ける彼らを軸に、ヤクザの親分&彼を待ち続ける女とアイドル&おっかけの男のエピソードを挟んだ計三組のラブストーリー。
何というか、非常に痛い映画だと思いました。そこまで愛するのか、愛したことでそうまでなるか、という、それがこの三組に共通する愛の形。人を愛するという行為は無論対象がなければ成り立たないのだけど、その思い詰めた気持ちが全て自分の内側に向かってしまった人々の姿を描くのです。ラブストーリーをテーマにこういう風味に仕上げてしまうって、まさに私の中の北野監督のイメージっぽい。世俗的なのにファンタジー。激しいのに静謐。美しくて残酷。純度が高いほど愛は狂気に近いのか。
タイトルになってる「Dolls」はそのまま作品を貫くキーワードにもなっていて、冒頭割と長めに挿入される文楽「冥途の飛脚」でまず人形がクローズアップされるんだけど、これが映画の内容をそれとなく暗示してるんだよね。つまり、人形に語らせて人間が演じる、という構成(だと思う)。で、主演の二人は放浪が進むにつれ次第にお人形のようにリアリティがなくなってゆくわけです。完璧すぎる自然美の中をヨージヤマモトの服着て延々歩き続ける。若い頃と同じ真っ赤なワンピ着て公園のベンチに座る松原智恵子も人形っぽいし、深キョン演じるアイドルはすなわち存在自体がお人形。どのカップルの物語も極めて俗っぽいありきたりのシチュエーションから始まるのに、だんだん非現実的に寓話化してゆく、その過程が実に独特だと思います。
あとは日本の四季が圧倒的に美しいです。「阿弥陀堂だより」みたいなあるがままの自然をさりげなく見せるというのではなくて、完全に映像美ということを意識し、追求してる感じ。自然以外にも色彩が鮮やかだなあという印象を受けました。逃避行に使う黄色い車とか、色とりどりの花畑とか、服の色とか。
あーなんかストーリーに触れまくりで自己流解釈めいた感想になってしまいましたけれども、この映画はあらすじを知っていても見るのに差し支えないというか、たとえ台本持ってて事前に熟読していたとしても実際に鑑賞するまでは評価が定まらない作品だという気がします。そして観る人によって、絶対感想が違う。満たされる人も物足りない人もいるだろうし、悲劇と解釈する人もいればハッピーエンドと見る人もいるはず。決して多くを語らない、これが北野映画の持ち味なんでしょうか。…うーん、映画を観て色々考えたのって久しぶりだなあ。
それにしても普通に邦画を観に行くようになっている最近の自分に驚き。これまで日本の映画には全く食指が動かなかったのに一体どうしちゃったんだ私は。ちなみに目下気になってるのは「たそがれ清兵衛」(←ほんとに)。真田広之超良さげ〜。ていうか井上陽水のあの主題歌がたまらなく魅惑的だYO!
****** ドールズ Dolls
2002年 日本 監督:北野武 出演:菅野美穂、西島秀俊、三橋達也、 松原智恵子、深田恭子 (劇場鑑賞)
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