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long long widing road■2006年12月08日(金)




電話の最後、生徒は僕に「私は先生に前ほど愛されてないと思う」と言った。

僕はどう答えることもできず、苦し紛れの深いため息をつくしかなかった。





電話は程なく終わった。





僕は毎日、彼女に今までよりもずっと大きな愛情をささげていたい。

けれど、彼女自身は「前ほど愛されていない」という。




僕は生徒によく言う、事実は受け止め方しだいで良くも悪くもなるものだと。
生徒は僕にはよく言う、先生がどう思ってるかじゃない、私がどう感じたかが大切だよ、と。

どう伝わるか、どう伝えられるか、それが大切なのに、僕はその方法見失ってしまった。





僕は彼女にだったら、働いて得た金、手に入れられるもの、時間、一枚の誓約書なんだって差し出せる。
僕はどんどんと「かたちあるもの」へのこだわりを強めている。
けれどそれらは彼女が今、もっとも願っているものではない。
彼女が欲しているのは、「かたちなきもの」であり、おそらく、それが愛情ってゆうやつなんだ。
今の僕は生徒にこの実感を与えられていない。





僕が今、生徒に突きつけている要求は彼女からしたら性急過ぎると感じられているだろう。
僕は彼女にずっとそばにいてほしい、だから、受け入れられる準備を進めよう、不自由ない世間一般に恥じない生活とかいうひどくくだらない特等席を彼女のために用意しようとしている。
君のためにとっておきの「かたち」を作ってあげれば、きっと喜んでくれるはずだ、その思いが今のモチベーションになっている。
けれど、そうしているうちに「かたちなきもの」へ目を向けることをおろそかにしてしまっているのだろうか。
だったら、最悪だ。





そして、「かたち」を作り上げている僕が生徒以外のひとに一度心を揺さぶられたのは事実だ。
「他の女に気持ちが揺れるような先生なら、要らない」そう彼女は言い放った。

僕は自身に問うた結果の選択をした。





走り続けてやる、この果てしない持久走の道を。

そしてもう一度、彼女に僕の愛情の実感を与えよう。




僕は、君が選ぶ最後の選択肢でありたい。





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