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二人のはじまり 5■2002年03月25日(月)
「好き」
え?
「だから、先生のことが好きなの。」
僕は、わけが分からなかった。 「好き」だという言葉の意味が理解できなかった。
「ねえ、先生、私のこと好き?」
ああ、僕はどの生徒も好きだよ。
「そういうんじゃなくて、好きかどうか聞いているの。ねえ、好き?」
君は大切な生徒だよ。
「そういうんじゃなくて、もう…。」
そんな問答を繰り返していた。 僕はそのとき生徒にたいして好きだとかいう感情は持っていなかった。 当時の僕は少し前に再開した高校時代の元彼女のことを思っていた。 別れてからも何年も意地の張り合いで、一月前に会ったときも、お互いにそのうちいい恋人を見つけるとかなんとかと見栄を張っていた。
「ね、先生、聞いてる?付き合おうよ。」
付き合おうにも、君には彼氏がいるじゃないか。
「それはそれ。」
わからないな。君には好きな彼氏がいる。そして彼氏は君を大切にしている。それでいじゃないか。 「分かってないなあ。わたしは先生のこと好きだっていってるの。だから、付き合うべきなの。」
男はみんな君のことを好きになると決まってるのかい。
「そう、だってみんな私のこと可愛いって言ってくれるんだよ。好きだって言ってくるんだよ。先生だけ違うなんて許せない。」
君は可愛いし、好きだよ。
「生徒としてってことでしょ?」
まあ、そうだね。
「そういう好きは要らないってば。」
しかし…突然そんな風に言われても戸惑うよ。
「先生、付き合っている人いないの?」
いない。
「好きな人とかは?」
まあ、いることはいる。自分がその人のことを好きなのかどうか不確かだけど。
それで僕は、生徒に元彼女のことを話した。
「そう、じゃ、先生はその女の人に告白してよ。」
しかし…そんな風に言われても…
「告白しなきゃダメなの。」
…分かったよ…。
話題はこのあたりで変わり、再び今から会う?という話になった。
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