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二人のはじまり 3■2002年03月23日(土)

何度目かの指導の後、緊急の連絡先にと、生徒に携帯の番号とメールアドレスを教えた。

その日以来、生徒からはときどきメールが来るようになった。

確か、その頃僕は、彼女に“ふつうに”先生らしいメールを返していたと思う。

意識することなど何もなかった。

生徒には彼氏がいて、しかも生徒はその彼氏にどれほど愛されているかをよく聞かされていたから。

僕は教科の指導方針、志望校の選定などのことで頭が一杯だった。





ある晩、車で家に帰る途中に携帯が鳴り、それは生徒と僕が電話で話す初めての時だった。

「もしもし、先生?」

初めて聞く声だった。

いつもの勢いあるトーンではなく、感情の抜けた消えてしまいそうな声。

その声に驚き、しばらく何も言えなかった僕だが、ようやく返すことが出来た。

あ…ああ、こんばんは。

しかし、僕はとぼけた答えは生徒の耳には入っていないようだった。


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