Experiences in UK
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2006年05月08日(月) |
第143週 2006.5.1-8 デザイン・ミュージアムとロンドン最高のレストラン、英国の大規模小売店 |
(ケンブリッジ再訪) 四月終わりの三連休の一日、ケンブリッジ観光に出かけました。約二年ぶりのケンブリッジでした。 キングズカレッジの大聖堂を見学し、ケム川でのパンティング(舟遊び)も楽しみました。やはりケンブリッジは良い雰囲気の町だということを再確認した一日でした。
今回ケンブリッジの町やキャンパスを歩いていて思ったのが、中国人と思しき学生の多さです。日本人はあまり見かけなかったのですが、連れ立って歩く中国人学生らしき集団は何組も見かけました。在学経験者によると、留学生に占める中国人の比率はやはりかなり高くなっているそうです。こんなところにもチャイナ・パワーを感じてしまいます。
(ウィズリー庭園) 日本のガイドブックによると、ロンドンの三大庭園とは、キュー・ガーデン、ハンプトンコート・パレス・ガーデン、ウィズリー・ガーデンだそうです。いずれも当家からは近い距離にあるのですが、先日、これらのうちのウィズリー・ガーデンを平日の昼下がりに訪ねてみました。ヒースロー空港を南に約20分下った場所にあります。 季節が良く(チューリップが満開でした)、天気も快晴だったからでしょうか、平日にもかかわらず駐車場がほとんど埋まっていたのに驚きました。園内はリタイア後のおじいさん・おばあさんや写生に来ていた付近の小学生などでたいへん賑わっていました。 半日かけてゆっくり回れる広さの庭園でした。庭園を一望できる場所に設けられたレストランのテラス席で昼食をとるのはなかなか贅沢だと思います。
(デザイン・ミュージアムとロンドン最高のレストラン) ロンドンの観光名所タワー・ブリッジの近くにデザイン・ミュージアムという小さな博物館があります。広義の「デザイン」というのは、ある意味で現在の英国の基幹産業とも言える分野です。無から有を生み出して富を創造するというソフト化経済大国の英国を象徴する産業分野の一つかもしれません。
ということを前提に考えると、デザイン・ミュージアムはロンドンの先端デザインを一堂に会して大々的にアピールした博物館ではないかとも思えるのですが、実は以前に訪れたことのある方から、結構シャビーで肩透かしを食らわされるとの前評判を聞いていました。 彼曰く、やはり「博物館」なので、最先端よりも過去を振り返ることに重点が置かれていた。戦前の新聞(フォント)とか100年くらい前の地下鉄の看板とかコンコルドで使用されていた椅子とかコンコルド機内で配られていた食事のメニューとか、ちょっと?という感じの品々が陳列されていた、ということでした。
最近リニューアルが施されたという事情もあったので、今回は少しだけ期待して行ったのですが、丁度いいくらいの期待量だったかもしれません。上記のような過去のデザイン(?)も展示されていましたが、現代美術系のデザインの展示も少しありました。へぇーと眺めて回るにはいい暇つぶしになるかもしれません。 というわけで、入場料金(7ポンド)との見合いで考えるとちょっとイチオシでお薦めするのは逡巡しますが、他の付随する要因が魅力をぐっと高めています。それは、二階のレストランBlue Printで食べた日曜定食(Sunday roast)が素晴らしくおいしかったということです。ここで食べたロースト・ビーフは間違いなくこれまで英国で食べたものの中で最高でした。その他の料理もベリー・グッドでした。 おまけに、テムズ河沿いに位置するこのレストランの窓際の席からは、タワー・ブリッジをはじめ、テムズ河を挟んだシティ方面の近代的なビルの眺めを一望することができます。各テーブルに小さな双眼鏡がそっと置いてあるのが粋なサービスです。 店員のフレンドリーな態度も含めて、庶民レベルでみたロンドンで最高のレストランとしてお薦めしたいと思います(値段は大人二人と子供二人で40ポンド程度)。子供連れもOKです。
(英国人のブリティッシュ・ロック) 上記ミュージアムの「過去」のフロアーに、レコード・ジャケットのコーナーがありました。展示されていたのは、ビートルズ(サージェント・ペッパーズなど数枚)、ローリング・ストーンズ(スティッキー・フィンガーズ)、ロキシー・ミュージック、クラッシュ(ロンドン・コーリング)、セックス・ピストルズ、デヴィッド・ボウイなどでした。
それぞれ趣のあるジャケットだとは思うのですが、感想が三つありました。 一つが、レコード・ジャケットの名作集というコンセプトならば、ブリティッシュ・ロックにこだわる必要もないのではということです。まあでもこの点は、ロンドンのミュージアムなので仕方ないでしょうか。 二つ目が、趣味の問題かもしれませんが、レッド・ツェッペリン、ピンク・フロイド、キング・クリムゾンなどの名作ジャケットが一枚も置かれていないのは不満でした。ブリティッシュ・ロックにこだわるのであればなおさらです。
三つ目に、余計な疑問を言えば、またビートルズですか、ということがあります。メディアなどを見ていてこの国の人が偏愛する英国出身アーチストというのがいて、私見では、ビートルズ、デヴィッド・ボウイ、エルトン・ジョンが御三家です。クィーンもそうかもしれませんが、外国人と比べてとくに英国人が偏愛しているという意味では、上記の三者をあげるのが適当と思えます。 これも趣味の問題でしょうが、「ちょっと違うのでは、イギリス人たちよ」というのが日本出身ブリティッシュ・ロック・ファンの心の声です。別にいいのですが、他にもいっぱい素晴らしいロック・バンドがあるのに、いつまで経ってもビートルズ、ボウイはどうだろうかと声を大にしたくなると気があります。日本人ならまあ理解できるのですが、英国人でもパーティなどの締めやカラオケなどでいまだにビートルズを歌うという場面に出くわした際には軽い驚きを禁じ得ませんでした(ライブ8もそうだった)。 ビートルズは好きでも嫌いでもないのですが、「それ程のものか」とは思います。むしろ、ハード・ロックとかプログレッシブ・ロックの偉大な英国出身バンドをもっと取り上げてもいいのにというのが個人的にいつも感じる不満です。
(英国の大規模小売店) 4日付のFT紙をみると、OFT(Office of Fair Trading, 日本の公正取引委員会に相当)が、英国の大規模小売店につき競争政策の観点から調査を実施しているというニュースが掲載されていました。 同記事であげられているグラフによると、英国の四大スーパーの市場シェアは、92年の五割程度から最近は八割程度にまで高まっているとのことです。四大スーパーとは、テスコ、アスダ、センズベリー、モリソンズのことです。
なかでも群を抜いているのはテスコです。全体の三割のシェアを占める英小売業界の巨人であり、さらにその勢いを増しているような報道がしばしば伝えられています。 確かに、我々が買い物をするのも主としてテスコであり、より近い場所にあるセンズベリーとかアスダにはあまり行きません。理由は、買い物がしやすくて、価格も安く、何となく信頼感があるからです。郊外にあるテスコの大型店舗は、店内外のデザインが大体どこも同じように設計されており、買い物客としてはそれだけで漠とした安心感が得られるものです。 そのような心理的な効果をさておいても、商品の陳列や野菜の鮮度などの点から考えてもテスコの信頼感は揺るぎません。テスコを見ていると英国を代表する小売店としての自負のようなものまで感じられてくるのは、英国で重視されるノブレス・オブリージュの精神を体現したもの、と言うのは言いすぎでしょうか(そうでしょう)。 郊外の大型店舗のみならず都心の小型店舗での競争激化、普及が始まった各スーパーのネット宅配制度における競争、保険など販売商品の多様化、カードによる顧客囲い込みなど英国の小売業界も環境変化と競争激化が進行しているように思えるのですが、そのなかでWinner takes allの法則により勢いを増しているのがテスコということのようです。
テスコをはじめとした大型小売店の躍進に対して、地域に密着した小規模小売店舗を駆逐し、ひいては地域文化までも破壊するといったような批判的な意見が時々メディアで見かけます(例えば、3月16日付タイムズ紙のコラム“The only way to stop the philistines of Tesco: stop giving them your cash”など)。 日本でも昔からある議論ですが、英国ではどうなのでしょうか。個人的な意見としては、英国では日本ほどに地元に密着した魅力的な商店街(あるいは商店群)のようなものは少ないように思うので、むしろ駐車場が完備していて、効率的な買い物ができ、遅い時間まで開いている大型店舗があるのは、地域にとってもメリットの方が大きいのではないかと思います。 私は外国人の旅行者としてしか地方の大型店舗を利用したことがないのできわめて限られた立場の意見ですが、英国の田舎でテスコ等の大型店舗を見つけて安心したことが何度もあります(トイレを借用できるなど公共施設としての存在意義も大きい)。
このテーマ、大型店舗による地域破壊とテスコの一人勝ちによる弊害という二つの論点があるわけですが、今のところ実感としていずれもデメリットはみられず、むしろメリットの方が大きいような気がしています。 この辺り、社会学的・経済学的にはどのように分析されるのでしょうか。
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