Experiences in UK
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2005年11月14日(月) 第118週 2005.11.7-14 インド人との対話、英連邦

先週末あたりからロンドンも寒くなってきました。今朝、テムズ河の川面に朝霞が立ち昇っていました。

(インド人との対話)
先週、たまたま在英国インド大使館に勤める参事官としばらく雑談をする機会がありました。インド人とじっくり会話を交わすのは初めての体験でした。
すさまじいインド英語とたたみかけるような話し方に圧倒されっぱなしでした。激しい身振り手振りで自説を展開する様は、日本人とも英国人とも違うコミュニケーションの仕方であり新鮮でした。また意見をひとつ述べるごとに、いちいちこちらの目を見据えながら、“isn’t it?”と念を押して同意を求められるのも、初めて遭遇したパターンであり、文字通り閉口してしまいました。

さて、話の中身で印象に残っていることが三点ほどありました。
第一に、件のインド人がいちばん強調していたのは、日本(経済)に対する尊敬の念でした。なんだかんだ言ってもやはり日本は立派な国だという点を繰り返して強調していました。
今の日本人はインドに注目せよというので盛り上がっているんだけど、と言ってみても、「インドの経済成長率は高いかもしれないが、一人当たりGDPとかでみた生活水準はまだまだ低いよ」と冷静な意見を述べていました。「インドの経済人はみんな日本を手本にしており、日本語を学ぶ人も急増しているんだ」とも言っていました。彼の日本礼賛は必ずしも日本人を面前にした追従口ではないと感じられましたが、私としては、彼らが日本をはっきりと目標にする位置まで来ているのだなということを改めて印象付けられた気がしました。

第二に、日本と比べてという文脈で、中国はダメだと言うことを盛んに言っていました。
曰く、「経済に関して今はブームかもしれないが、将来性が乏しい。なによりもデモクラシーがない。インドと日本はこっち側の国だけど、中国はあっち側の国だ。とても信頼できない」と言い、日本やインドと比べる対象にもならないと言わんばかりでした。インド人が中国をどう見ているのかについては以前から興味があったのですが、想像以上に激しいネガティヴな反応に少し驚きました。

第三に、それでは過去の宗主国である英国に対してどんな印象を持っているのか。これも自分としては興味深かったのですが、彼はボロクソに言っていました。
曰く、「この国に経済的に見るべきものは何もない。まともな製造業と言ったらボーダフォンくらいじゃないか。わけのわからんサービス業で成り立っている国の将来性は高くない。生活インフラの水準も低いし、この国に来てよかったことなんて何もない」といった調子でした。

(英連邦)
ところで、英語で大使館とはembassyであり、例えば日本大使館はJapanese embassyと表現します。しかし、インド大使館のことはIndian embassyとは言わず、Indian High Commissionと呼ばれます。なぜか。それは、インドが英連邦の一員だからです。

では、英連邦とは何か。例によってUK NOWのウェッブ・サイトを覗いてみると、以下の解説がありました。
「現在の英連邦は1999年に創設50周年を祝いました。1949年には少しの加盟国しかいませんでしたが、今では世界のほぼ全大陸の54ヶ国から構成されるまでに成長しました。世界総人口の3人に1人が英連邦加盟国の国民です。彼らは数多くの人種にわたり、数々の伝統を持ち、非常に異なる経済背景にあります。しかし、彼らは共通語としての英語を基にして、文化遺産を共有しており、似たような行政、教育、司法、法律のシステムを持っています。
英連邦は政治的な思想と人間の価値を共有した、政府、非政府組織、人々の順応性にすぐれた近代的な集合体に形を変えてきました。民主主義、人権、治安、そして持続可能な発展の追及を信条としています。加盟国は何ら法的または立憲的な責任は負いません。英連邦の数多い活動は技術知識の提供と経験の共有を基にしています。加盟国の多くは経済的および環境的な影響を受けやすいという問題を抱えた小国です。こうした問題をこれらの小国が克服するのを助けることが英連邦の重要な活動です。その本部である英連邦事務局はロンドンにあります。
エリザベス二世は英連邦の元首ですが、立憲的な責任を負うものではありません。女王は英連邦16ヶ国の元首でもあります。その他は共和国で、元首または君主として大統領がいます。」

要するに、「英連邦(The Commonwealth of Nationsまたは単にThe Commonwealth)は、大英帝国がその前身となって発足し、イギリスとその植民地であった独立の主権国家からなる、緩やかな連合(集合体・組織体)」ということです(ウィキペディアより)。さらに、右ウェブ・サイトには次の一文がありました。「なお、加盟国同士では大使を交換せず、「高等弁務官(High Commissioner)」を外交使節長としている」
英連邦は実体を伴わない極めて緩やかな連合でありながら、現在も加盟を希望して順番待ちをしている国が存在しているそうです。また、驚くべきことに、かつて英国の植民地ではない国でも英連邦に加盟している例があるそうです。
「実体を伴わない」と言いつつも必ずしも歴史の遺物というわけでもなく、微妙に現代の外交に影響力を及ぼしているようで、まったく不思議な組織です。対途上国という意味で外交の裏舞台において隠然たる力を有する大英帝国のソフト・パワーの一種と考えられるのかもしれません。


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